密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介及び読書感想をまとめたブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

小説

夏の庭―The Friends (新潮文庫)(2018年新潮文庫の100冊)

著:湯本 香樹実 死について関心を持った3人の少年。 彼らは、近所の一人暮らしの老人が死にそうだという噂を聞きつけ、 好奇心から毎日観察を始める。そして。。。 泣ける本、という噂だったが、どうやら私は冷徹な人のようで、とくに涙することもなくあっ…

異邦人(2018年新潮文庫の100冊)

著:カミュ、訳:窪田 啓作 有名なカミュの処女作である。「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かも知れないが、私にはわからない」という有名な書き出しで始まる。そして、殺人を犯してしまった主人公は、動機を「太陽のせい」と答え、処刑を待つ…

きみはポラリス (2018年新潮文庫の100冊)

著:三浦 しをん 人気作家三浦しをんが書いた11編の短編が収められている。どれも恋愛がテーマになっているということで読んでみたが、この恋愛というのが型どおりではない。多彩で、変化に富んでおり、人物設定も、ストーリーも、作品ごとに大きく異なって…

吉本ばななの名作。『キッチン』(2018年新潮文庫の100冊)

著:吉本ばなな 「彼女たちは幸せを生きている。どんなに学んでも、その幸せの域を出ないように教育されている。たぶん、あたたかな両親に。そして、本当に楽しいことを知りはしない。どちらがいいのかなんて、人は選べない」。 吉本ばななの出世作。一世を…

引っ越しを続ける親子。『神様のボート』(2018年新潮文庫の100冊)

著:江國 香織 別れた「あのひと」と再会する日を願って、引越しを繰り返すピアノ教師の女性とその娘の物語。高崎。今市。川越。高萩、佐倉、そして逗子。しかし、東京には行ってはいけない。頻繁に切り替わる母と娘の一人称によって進む。これによってナレ…

森絵都の見事な傑作。『カラフル 』

著:森絵都 「人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷ってる。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて」。 なんとも唐突な始まりだ。 死んだ…

森見ワールド全開。誇大妄想型一大純愛絵巻。『夜は短し歩けよ乙女 』

著:森見 登美彦 変わった小説ですね。世の中には、馴染めなかったとか、入っていけなかったという人も何人もいるようですが、大丈夫。そういう人は、たぶん正常です(笑)。 舞台は京都。古風で大げさな表現を散りばめた文体で、現実とも幻想ともつかない調…

すべて音楽がテーマ。カズオ・イシグロの5作品を収めた短編集。『夜想曲集: 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語 』

著:カズオ・イシグロ カズオ・イシグロの書き下ろしの短編集。副題に「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」とあるように、全て、音楽がテーマになっており、音楽をはさんで男と女がいるストーリーが展開されている。 繊細で品の良い文体で、「老歌手」や「夜…

一人の女性の、少女から大人になるまでの成長を鮮やかに描いた作品。『スコーレNo.4 』

(著:宮下 奈都) 骨董品屋の長女である主人公麻子が、中学生、高校生、大学生を経て、さらに社会に出てその波に揉まれ、大人になってゆく姿を描いた物語。 母や祖母。2人の妹、七葉と紗英。父。いとこ。初恋の人。恋人。職場の同僚。上司。麻子の心の揺ら…

カズオ・イシグロの名作。「わたしを離さないで 」

著:カズオ・イシグロ 「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その中に二人がいる。互いに相手にしがみついている。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に…

社会派小説家池井戸潤が直木賞を受賞した見事な長編小説。『下町ロケット 』

著:池井戸 潤 「半沢直樹」で一気にブレイクした池井戸潤が、 第145回直木賞を受賞した作品。 その後、TBSのドラマとしてもヒットした。物語開始早々、いきなりの試練連発。 町工場の中小企業を襲う、取引打ち切りに、特許訴訟。 しかし、これらはロケット…

江戸時代のキリシタン弾圧と神の沈黙。海外で映画化された遠藤周作の代表作。『沈黙』

著:遠藤 周作 遠藤周作の代表的な長編小説のひとつ。映画になり、一時話題になったので、読んでみた。徳川家光の時代に長崎に潜入したポルトガルの宣教師が主人公である。当時の厳しいキリシタン弾圧の様子が何度も出てくるため、映画はアメリカではR指定さ…

満願

著:米澤 穂信 短編集。山本周五郎賞受賞。6つの作品が収められている。夜警、死人病、柘榴、万灯、関守、そして満願。 6つの作品はそれぞれ個性も登場人物も設定も違うが、いずれも粒ぞろい。あまりの展開に、読みながら言葉を失い、鳥肌が立った。確かに…

ぐいぐい引き込む見事な社会派長編小説。『空飛ぶタイヤ(下)』

著:池井戸 潤 「半沢直樹シリーズ」で有名になった池井戸 潤の社会派長編小説。こちらは下巻である。巨大グループ企業の立場を利用してあらゆる方面に圧力をかけ、徹底的に隠蔽を図るホープ自動車。ちいさな運送会社の危機がさらに深刻さを増す中、社長の赤…

社会派小説家池井戸潤が実際の事件をヒントに描いた長編小説。『空飛ぶタイヤ(上)』

著:池井戸 潤 「半沢直樹シリーズ」で有名になった池井戸 潤の長編小説。走行中のトレーラから外れたタイヤが母子を直撃。夫と子供を前に病院のベットでその母親は息を引きとる。わずか従業員90人の赤松運送は警察の捜査を受け、マスコミが大々的に報じた事…

カエルの楽園

百田尚樹氏の寓話的小説である「カエルの楽園」についてのレビューです。