著:池井戸 潤
「半沢直樹シリーズ」で有名になった池井戸 潤の長編小説。走行中のトレーラから外れたタイヤが母子を直撃。夫と子供を前に病院のベットでその母親は息を引きとる。わずか従業員90人の赤松運送は警察の捜査を受け、マスコミが大々的に報じた事故原因はトレーラの整備不良。社会的信用を失墜し、被害者の家族と世間の憎しみの中で窮地に立つ小さな運送会社。影響は大口顧客、運転資金融資をあてにしていた銀行、さらには小学校に通う子供にまで及ぶ。絶体絶命の危機に追い込まれる2代目社長の赤松徳郎。
一方、トレーラーの製造元である大会社であるホープ自動車。大企業の組織の理論。社内抗争。過去の不祥事。内部告発。隠蔽工作。かぎつける雑誌記者。グループ企業支援をめぐるメインバンク内部の争い。そして。。。
これは面白い。非常に面白い。実際に発生した自動車会社のリコール隠し事件を題材にして書かれた社会派小説。事件をめぐり、中小企業の赤松運送と、大企業であるホープ自動車の2つの企業を軸に、様々な人間の思惑が、悲しみが、怒りが、苦しみが、文字通り渦を巻き、交錯し、ドラマチックに展開してゆく。見事な傑作である。
文庫、480ページ、講談社、2009/9/15