著:吉本ばなな
「彼女たちは幸せを生きている。どんなに学んでも、その幸せの域を出ないように教育されている。たぶん、あたたかな両親に。そして、本当に楽しいことを知りはしない。どちらがいいのかなんて、人は選べない」。
吉本ばななの出世作。一世を風靡しただけのことはある。研ぎ澄まされたセンス。後半へ行くにしたがってちょっとあり得ないなと思われてくる多少無理なストーリー展開に包まれ、文学の普遍的なテーマである、生と死、孤独や愛などが、深刻になり過ぎないくらいの加減で語りかけてきて、独特のテンポと文体で読者をぐいぐい引き込む。
言葉づかいや文章が一部古く感じられるが、これは時代の変化によるものだろう。その時にもっとも繊細で新鮮な言葉を選んでそこに感性を絡めながら書いたものは、どうしてもそうなる傾向はある。これは仕方のないことだ。
もうひとつ収められている「ムーンライト・シャドウ」も、失った大切な人をめぐる不思議なエピソードが、切なく、しかしさわやかに表現されており、良い作品だった。
文庫、197ページ、新潮社、2002/6/28
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- 作者: 吉本ばなな
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/06/28
- メディア: 文庫
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