著:高橋 秀実
「一般的な野球のセオリーは、拮抗する高いレベルのチーム同士が対戦する際に通用するものなんです。同じことをしていたらウチは絶対に勝てない。普通にやったら勝てるわけがないんです」(開成高校野球部青木秀憲監督)。
全国屈指の東大合格者数を誇る超進学校開成高校。この野球部が微妙に強い。多数の学校が参加する東京大会において過去最高はベスト16。ところが、グランドを使って練習できるのは1週間にわずか1回だけ。その日に雨が降るとその週はグランド練習はなくなってしまい、定期テストの週とその前の週も部活禁止となるので、1ヶ月近く間が空くことすらあるそうだ。
練習時間が極めて限られてしまうので、時間を使って徐々にチーム力を積み上げる方法はとれない。バントやサインプレーもほとんどやらない。守備練習はどんなにやったところでエラーするときはするからほどほどに。ピッチャーはストライクが入るのが条件。
そんなチームが活路を見出したのは打撃。守備は積み重ねだが、打撃はコツをつかむと短期間で一気に上達する。そして点が入る。そのために、とにかく思いっきりバットを振る。そしてどさくさにまぎれて大量点を狙う。だから、勝つにせよ負けるにせよ、やたらコールドゲームが多いという。
「何がなんでもヒットじゃなくて、何がなんでも振るぞ!」と選手達を鼓舞する青木監督。目標は強豪校撃破。「一番いいのは15-0とかですかね。負けたとしても12-15とか。いずれにしても大量得点」「のびやかに自由に暴れまくって欲しい。野球は『俺が俺が』でいいんです」という持論がすがすがしく、印象的だ。
理由や状況をロジカルに挙げて自分を説明する選手達。「東大が六大学で優勝するより、開成が甲子園に出るほうが先になる可能性が高い」と微妙な可能性に言及するOB。なかなか面白かった。
文庫、241ページ、新潮社、2014/2/28