密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

全国屈指の東大合格者数を誇る超進学校開成高校野球部の戦略。『弱くても勝てます。』(2018年新潮文庫の100冊)

著:高橋 秀実

 

「一般的な野球のセオリーは、拮抗する高いレベルのチーム同士が対戦する際に通用するものなんです。同じことをしていたらウチは絶対に勝てない。普通にやったら勝てるわけがないんです」(開成高校野球部青木秀憲監督)。


 全国屈指の東大合格者数を誇る超進学校開成高校。この野球部が微妙に強い。多数の学校が参加する東京大会において過去最高はベスト16。ところが、グランドを使って練習できるのは1週間にわずか1回だけ。その日に雨が降るとその週はグランド練習はなくなってしまい、定期テストの週とその前の週も部活禁止となるので、1ヶ月近く間が空くことすらあるそうだ。

 練習時間が極めて限られてしまうので、時間を使って徐々にチーム力を積み上げる方法はとれない。バントやサインプレーもほとんどやらない。守備練習はどんなにやったところでエラーするときはするからほどほどに。ピッチャーはストライクが入るのが条件。

 そんなチームが活路を見出したのは打撃。守備は積み重ねだが、打撃はコツをつかむと短期間で一気に上達する。そして点が入る。そのために、とにかく思いっきりバットを振る。そしてどさくさにまぎれて大量点を狙う。だから、勝つにせよ負けるにせよ、やたらコールドゲームが多いという。

 「何がなんでもヒットじゃなくて、何がなんでも振るぞ!」と選手達を鼓舞する青木監督。目標は強豪校撃破。「一番いいのは15-0とかですかね。負けたとしても12-15とか。いずれにしても大量得点」「のびやかに自由に暴れまくって欲しい。野球は『俺が俺が』でいいんです」という持論がすがすがしく、印象的だ。

 理由や状況をロジカルに挙げて自分を説明する選手達。「東大が六大学で優勝するより、開成が甲子園に出るほうが先になる可能性が高い」と微妙な可能性に言及するOB。なかなか面白かった。

 

文庫、241ページ、新潮社、2014/2/28

 

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)

「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫)

  • 作者: 高橋秀実
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/02/28
  • メディア: 文庫