著:森 絵都
孤独を乗り越えてゆく思春期の物語。
正直、残りの10ページを切るまでは、
なんだかんだといっても子供向きの話だなと、
多少シニカルなイメージを持ちながら読んでいた。
しかし、最後の展開で一気に印象が変わった。
やわらかでやさしい文体で油断させておきながら、
ちょっとした布石があちらこちらにさりげなく打ってあり、
一見おとなしいエンディングにおいて、
それらがひとつのテーマに自然な形で収束してゆく。
さすが、森絵都。
ほろっとさせ、絶妙の余韻が残る。
見事な作品だった。
文庫、176ページ、角川書店、2010/6/25