著:カミュ、訳:窪田 啓作
有名なカミュの処女作である。「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かも知れないが、私にはわからない」という有名な書き出しで始まる。そして、殺人を犯してしまった主人公は、動機を「太陽のせい」と答え、処刑を待つ身となる。
現代的なテーマを先取りした小説だと思う。同時に、いろんな意味で極度に個人が大きく尊重されるようになった現代において、この主人公の感覚を「不条理」の一言で片づけることには、少し抵抗を覚えた。論理的な一貫性がないという説も、本当にそうだろうかとさえ思った。考えさせる作品なのだが、いくら考えても、万人を納得させる完璧な答えがあるわけではない。それもまた名作の条件のひとつなのだろう。
文庫、143ページ、新潮社、1963/7/2