密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

未来の年表2

著:河合 雅司

 

 ベストセラーになった「未来の年表」の第2弾である。前著とは切り口が少し変わっているが、テーマ自体は、空き家がたくさんできる、宅配をやる人がいなくなる、中小企業の後継者が不足するというように、少子高齢化が進めば日本や私たちはどうなるのか、ということを扱っていることには変わりはない。前著が売れたことで著者にはたくさん講演依頼が舞い込んだそうで、おそらくそこで投影して説明するために作ったであろうプレゼン用のスライドの絵がいくつも登場する。そのため、よりポイントがわかりやすくなっている。解説においても、講演会での聴衆や主催者側の反応に触れているところもある。

 

 著者は、人口減少社会は避けられないことを力説し、「戦略的に縮む」ことの大切さを訴えている。対策として挙げられていることは、個人と企業と地域に分け、以下のようなものである。

・働けるうちは働く

・一人で2つ以上の仕事をこなす

・家の中をコンパクト化する

・ライフプランを描く

・年金受給開始年齢を繰り下げ、起業する

・全国転勤をなくす

・テレワークを拡大する

・商店街は時々開く

 

 正直、テーマの大きさに比べ、対策の方はもうひとつな気がした。特に、企業や地域ができることはこれだけではないのではないか。少子高齢化が進むことでどうなるのかを知りたい人には悪くない本だと思われる。

 

新書、238ページ、講談社、2018/5/16

 

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること (講談社現代新書)

  • 作者: 河合雅司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/05/16
  • メディア: 新書
 

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

  • 作者: 河合雅司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/14
 

 

 

パンの歴史 (「食」の図書館)

著:ウィリアム ルーベル、 訳:堤 理

 

「新鮮さはそれ自体に価値がある。しかし歴史的に見ると、パンはあたたかいうちに食べられたことはなく、実際、現代にいたるまでの健康指南書は口をそろえて、焼きあがって1日おかなければパンを食べてはいけないと述べていた。パンは冷めるまでめまぐるしく変化を起こす」。


 パンの話。厳密に歴史を解説した本というより、推論や主観を交えて自由に書かれている。翻訳モノで、著者はアメリカ在住のフードライター。

 紀元前4000年頃にイラク南部に成立した古代都市ウルクやそれに続くメソポタミア文明古代エジプト、さらにはギリシャ・ローマにおいて、パンは経済や食の基盤だった。それがヨーロッパに広がり、アメリカ合衆国やカナダやオーストラリアへも拡散する。今から2万5千年前には、麦はまだ野生種のものだったが、パンを焼くことはすでに始まっていたという。

 品種改良が進む以前の昔の麦は、実を取り出すのが大変だった。大麦は殻と実が癒着していたし、小麦は殻が固すぎて容易に脱穀できなかった。このため、臼が活躍し、その後により分けた。パンを膨らませる発酵には、乳酸菌による自然発酵(サワードウと呼ぶすっぱい生地になる)か、酵母を使う。古くには醸造、特にビール作りの酵母が利用されてきたらしい。ヨーロッパにはローフブレッドとは別に、平焼きパンの歴史もある。

 初期のキリスト教の聖者たちは粗末な黒パンを食べていた。しかし、文化的には、小麦で作った「白いパン」が裕福な人達の象徴となってゆく。現代のロシアとその周辺国では生活水準向上とともにライ麦パンが減って小麦のパンが増えているが、西側でもかつてはそのような流れがあった。

 冒頭に引用したような、パンと焼いてからの時間経過についての記述は興味深かった。現代の日本では「焼きたてパン」の店が流行っているが、歴史的には自家製パンは2週間に1回あるいはそれ以上長い周期でしか焼かれないことが普通だったらしい。また、パンの劣化は複雑な現象で、むしろ1日くらい置いた方がおちつくという。カビの生えたパンであっても食べている地域すらある。また、パンは劣化しでも60度くらいで温めると回復するそうで、オーブンやトースターでの再加熱の習慣はそこから生まれたようだ。

 塩の混ぜ具合もポイント。1.5%くらいが標準だが、3%くらいにしたり、伝統的に塩を入れない場合もある。19世紀以降、砂糖を混ぜることが行われるようになり、特にアメリカは多めに入れる傾向がある。パンのほんのりした甘さは、普通は砂糖が後押ししている。

 各国別のパン事情も紹介してある。フランスは17世紀後半からパンの製法について厳格に規定し、自国のパンに対して絶対的な自信を持っている。ドイツにはライ麦パンの伝統が残る。トーストはイギリスのパン文化の象徴で、それがアメリカに渡って広がったという。アメリカのパン文化は元々はイギリスの影響が強かったが、今では様変わりしてフランスをはじめ各国からの移民によってもたらされたパン文化が生きている。

 現代では、工場で機械的に生産されたパンと、熟練工が作るパンがしのぎを削っている。大規模生産のパンは批判にさらされることが多いが、化学的な知見から新たな製法が生み出されたり、評判の高いパン職人にコンサルティングを依頼してその方法を取り入れたりしている。パンの文化は今後も変わり続けてゆくであろうと著者は最後に述べている。

 

単行本、192ページ、原書房、2013/8/26

 

パンの歴史 (「食」の図書館)

パンの歴史 (「食」の図書館)

  • 作者: ウィリアムルーベル,堤理華
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2013/08/26
  • メディア: 単行本
 

 

ディック・ブルーナのすべて 改訂版

編集:講談社

 

「僕は子供たちにわかってほしいと思って描いてはいません。小さいころ欲しかったものを作っているだけです。人生の初期、特に幼いころというのは、幸せで、あたたかさに包まれて、健康的でなくてはいけません。そんな環境に育つことが力強い人生のはじまりになるからです。僕の経験からそう思うのです」(ディック・ブルーナ

 

 1999年に発売された本の改定新版。オールカラー印刷のハードカバー本で、写真や作品がたくさん載っている。

 1955年に誕生したミッフィーちゃんで有名な作家であり、ミッフィーちゃんについてはたくさんの説明や資料が掲載されている。また、ブルーナはキャリアとしてはグラフィック・デザイナーとして出発していて2000冊以上の本の装丁を手掛けており、それらについてもいくつか紹介されている。ポスターなどの写真もある。

 ディック・ブルーナの生い立ちについても、写真付きで14ページに渡って丁寧に紹介されている。加えて、普段の仕事や、工房についても紹介されている。

 

 左右に広く伸びた白い口ひげをたくわえ笑顔で微笑むブルーナ氏のインタビューや、奥さんや2人の息子と1人の娘のインタビューもある。若いころ、その後奥さんになった女性と親しくなろうと好きでもない犬を飼って連れていた、しかもそれを相手に見抜かれていたという話は笑った。ブルーナ作品との関係を中心に、オランダとその文化について説明した部分もある。

 

 全体的にビジュアルを重視した構成で作られており、とても見やすく、読みやすく、かつブルーナ風を強く意識したデザインになっている。

 

単行本、127ページ、講談社、2018/2/28

 

ディック・ブルーナのすべて 改訂版

ディック・ブルーナのすべて 改訂版

  • 作者: 講談社
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 単行本
 

 

Web API: The Good Parts

著:水野 貴明

 

 Web APIの設計や開発や運用において、留意すべきことを簡潔にまとめた本。URIにアクセスするとJSONXMLで結果を返すタイプであるいわゆるREST APIを前提としている。

 内容的には、Web APIの重要性、設計の注意やポイント、データフォーマットをどのようにすべきか、OAuth2.0との関連、HTTPの仕様との関係、セキュリティ上の注意、大量アクセスへの考慮といったことが書かれている。

 具体例が多く示されていて、わかりやすい。日本人が書いたものなので、文章も翻訳もののような回りくどさはない。よくまとめられている。付録として、Web APIチェックリストなどがついている。勉強になった。

 

大型本、224ページ、オライリージャパン、2014/11/21

 

Web API: The Good Parts

Web API: The Good Parts

 

 

「流れる臓器」血液の科学―血球たちの姿と働き

著:中竹 俊彦

 

「私は、マスコミが広めた『血液サラサラ』『血液ドロドロ』は、医学や科学科学の立場からはふさわしくないと考えます。『血液型性格診断』など論外のことです」。

血液の成分、働き、赤血球や白血球などの役割、仕組みの概要についてわかりやすくコンパクトに解説している。最後には血液に関する様々な誤解や非常識についても言及している。

「第1章:血液を観る」「第2章:血液の循環と役割」「第3章:ヘモグロビンの正体」「第7章:血液『常識』の非常識」は比較的平易な内容で、特に前提知識がない方でも、そう難しくはないと思われる。「第4章:白血球の姿と働き」も要点がうまく整理されてまとまっているが、生体防御機能については本書が初めてという方は「生物図録」など他のVisualな解説本も参照した方がよいかもしれない。「第5章:凝固と溶解の驚くべき仕組み」も要領よく書いてあるのだが、個人的にはあまりなじみがないところであり凝固の第V因子以降の働きと抗疑固の説明にはあまりついていけなかった。あと、「第6章:赤血球と血小板の誕生」における、血球の血管デビューの写真と、巨核球から血小板が引きちぎれて出来る様子は、とても印象的だった。

意外に思われるかもしれないが現代は科学に関する迷信が溢れている。プラズマイオン効果などもそうだし、科学を語った非科学的な番組のせいで納豆がスーパーから消えたこともあった。本書を読むと血液に関してもそのような迷信がいろいろあることに改めて気づく。酸性食品をたくさんとったからといって血液のphが変わることはないし、血液サラサラとかドロドロは意味不明(血液はむしろ自力で流れないくらいドロドロが正常でサラサラだと異常)、血液型占いも根拠なし。コレステロールについても、体内で合成される量が圧倒的であって食品には左右されず、「遠慮なく卵料理を楽しんでください」とのこと。世の中の科学が進歩しても、結局われわれ一人ひとりがそれを正しく学ばないと意味が無いことを認識する良い機会にもなった。

 

新書、200ページ、講談社、2009/2/20

 

「流れる臓器」血液の科学―血球たちの姿と働き (ブルーバックス)

「流れる臓器」血液の科学―血球たちの姿と働き (ブルーバックス)

  • 作者: 中竹俊彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/02/20
  • メディア: 新書
  • 購入: 3人 クリック: 40回
 

 

 

新編 ヴァイオリン&ヴァイオリニスト (ONTOMO MOOK)

編集:音楽の友

 

 数年おきに最新情報を更新して新編が出ているヴァイオリンとヴァイオリニストについての紹介本。ムック本サイズで表紙と裏表紙を除き全て白黒印刷である。

 

 ただ、ヴァイオリンの本としては、それほど詳しいものではなく、前回のバージョンにあった工房訪問も消え、「日本弦楽器」「クロサワヴァイオリン」「文京楽器」の3店の紹介と、「東京ストラディヴァリウスフェスティバル2018」の関係者のインタビューと展示予定の4挺のヴァイオリンの紹介くらい。

 

 冒頭の神尾真由子のインタビューは、天才少女といえどもいろいろ苦労してきたんだな、と思う内容だった。特に、「私生活が落ち着いているほうが、演奏家にはよいと思います。自分のことで一杯一杯では、余裕がなく、自分本位な人になってしまう。演奏家には作曲家への共鳴が必要ですから、自分がしっかりしていないと作曲家に寄り添えない」と、述べているのが印象的だった。

 

 取り上げ方の大きさが演奏者によって違うことと、それぞれの感想についても人によって賛否があるかもしれないが、新旧のヴァイオリニストのガイドとしては、それなりに充実している。個人的にコンサートで聴いたことのある内外のアーティストも多くいて、おまとめ用としても便利である。最近はかつて盛んだったいろいろなレーベルによる新たな録音リーリースが激減していることから新しいアーティストの情報のチャネルが少し狭まっている感もあるし、ヴァイオリニストの情報本だと割り切れば一定の役には立つ。

 

ムック、179ページ、音楽之友社、2018/2/27

 

新編 ヴァイオリン&ヴァイオリニスト (ONTOMO MOOK)

新編 ヴァイオリン&ヴァイオリニスト (ONTOMO MOOK)

  • 作者: 音楽の友
  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2018/02/27
  • メディア: ムック