密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

みんなでアジャイル ―変化に対応できる顧客中心組織のつくりかた

著:Matt LeMay、訳:吉羽 龍太郎、永瀬 美穂、原田 騎郎、有野 雅士

 

 アジャイルプロジェクトの進め方について述べた本。アジャイル開発の進め方にはいろいろな流儀があるが、大きくは「アジャイルソフトウェア開発宣言」という有名な基本的な考え方があり、そこからリンクをたどれる「アジャイル宣言の背後にある原則」という12の原則が憲法のような役割を果たしている。ただ、これらはあくまでも宣言と原則であり、非常に短いものである。このため、本書にも言及されているが、アジャイルは現場で開発効率を追求するためのの手法としての役割に焦点があてられることがよくある。

 

 本書ではこの宣言と原則を尊重しながら、アジャイルは単なるプロセスやツールではなく、「アジャイルは同時進行するイノベーションから生まれた単一のムーブメントだ」とし、以下の3点から何かと誤解の多いアジャイルの具体的な適用方法についての著者の考え方を説明している。

 

  • 顧客から始める
  • 早期から頻繁にコラボレーションする
  • 不確実性を計画する

 

 大きなポイントとして、著者は「アジャイル」と「リーン」「デザイン思考」との共通点として、「急速に変化する世界において、組織はどのようにして顧客のニーズを満たすことができるのか」を挙げ、アジャイルを開発現場だけでなく組織全体として共有して実戦することの重要性を説いている。

 顧客にすぐに価値を届けられるものに焦点を合わせ、組織文化は報告や批評から協調を中心とし、発掘・スケールのためのつながりを作る。デイリースタンドアップ(デイリースクラムとも呼ぶ)の進め方。ツールの説明などはあまり無い。あくまでも、3つの原則に従って速くて柔軟で顧客第一にするための組織文化の在り方も含めた主張が展開されている。Shopifyなどの例も紹介されている。

 

 薄い本であるが、全体的に一本筋が通っており、何かと誤解が多いアジャイルについてのそもそも論を整理する上では参考になる本である。ただ、おそらく翻訳の問題ではあろう、日本語の文章として、あまりにも読みにくい。

 

出版:オライリー ・ジャパン、発売:オーム社、216ページ、2020/3/19