2022年11月末に公開された対話AI「ChatGPT」は、豊富な学習結果に基づき人間が書いたかのような自然で滑らかな文章を生成したり対話する能力を持ち、世界に大きな衝撃をもたらした。本書は、日経クロストレンドの記事からChatGPT関連のものを集めて構成したムック本である。
以下のような構成となっている。
- Chapter1 超実践プロンプト公開 ChatGPT活用の極意
- Chapter2 キーパーソンに聞く 生成AIがひらく未来
- Chapter3 生成AIで広がる 新トレンドを読み解く
- Chapter4 文系でもスイスイ分かる AIの新常識
- Chapter5 ChatGPTだけじゃない! 厳選「AIツール100」
Chapter1 超実践プロンプト公開 ChatGPT活用の極意
この章では、ChatGPTが向いている分野、効果的なプロンプトの作り方のコツ、Excelなどと組み合わせた活用方法といった、ChatGPTの利用方法についての話が中心となっている。
用途としては、文章作成、企画書作り、プログラミング学習、壁打ち、相談相手、要約、英語学習といった用途、有料版と無料版の違いといったことが列挙されている。プロンプトとしては深津貴之氏の「深津式汎用プロンプト」を例に出力を繰り返して質を高めるといった方法が対談とともに紹介されている。
また、ChatGPTを加えたMicrosoftのBingの新機能や、画像生成のMidjourneyについても触れている。
Chapter2 キーパーソンに聞く 生成AIがひらく未来
この章はインタビュー特集。オープンAIのCEOのグレッグ・ブロックマン、ChatGPTに対抗するシステムを検討しているイーロン・マスク、マイクロソフトのチャールズ・ラマナ&コレット・ストルバウマー、未来学者のエイミー・ウェブ、日本の松尾豊&尾原和啓などの対談が載っている。
Chapter3 生成AIで広がる 新トレンドを読み解く
生成型AIが影響を与える分野として、マーケティング、エンタメ、学習、クリエイター、エージェント、マネージメントなどについて論じられている。法律上の注意点についても2ページにわたって書かれている。
Chapter4 文系でもスイスイ分かる AIの新常識
この章はディープラーニングと生成AIの基礎知識解説のようなものが中心となっている。文系でもスイスイわかるかどうかはわからないが、テーマ別に図解で要点が簡潔に説明されている。
Chapter5 ChatGPTだけじゃない! 厳選「AIツール100」
個人的にこの章は参考になった。今やAIツールは百花繚乱で、全く追いついていないからである。ただ、今も新たなツールが毎日登場するので、すぐに古くなるだろう。
ChatGPTは間違いなく新しい時代の幕を開けた。ただ、現在の生成AIは発展途上であり、まだ万能ではない。そのため、生成AIの特性を理解し、適切な使い方の作法を身につけることが重要である。広く普及しているソフトウェアが生成AIに対応していく中で、生成AIを知り使いこなしている人とそうでない人との間で業務のアウトプットに大きな差が生じる可能性すらある。加えて、この分野はまだまだ発展することは間違いない。ChatGPT関連の本は一気にたくさん出ているしネット上にも情報があふれているが、とりあえず本で1冊ということであればよい本だと思う。
日経BP、2023/7/11発売、124ページ