密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

著:三宅 陽一郎

 

 ゲームにおけるAIの活用について述べた本。技術や人工知能理論というより、コンセプトレベルの話が中心である。よって、数式を用いた論理解説やプログラミングレベルの話は無い。その一方で、概念を図表や絵に表現したものがいろいろ入っている。

 デジタルゲームにおける大型化とプロシジャー化の2つの進化方向。キャラクターの人工知能の自律化。自律的な活動と演技の組み合わせによるキャラクターのAI化。

ユーザ体験を作り出すゲームAIとして大きく3つのタイプのものが連動する。
・キャラクターAI: 頭脳として機能する
・ナビゲーションAI:情報を獲得しキャラクターAIをサポートする
・メタAI:全体の流れといったコントロールを行う

 アージ理論。階層化黒板による情報の処理。アービター、ナレッジソース、ブラックボードの3つからなるブラックボード・アーキテクチャによる世界認識。

 感覚と身体をつなぐ反射的な知能の層と自律的な知能の層(この2つの層は対立する関係でもある)。物理的情報→身体感覚情報→抽象知的情報という流れの抽象化をたどる状況認識とそこからの意思決定とそれに基づく行動生成。

 人工知能の中心的な問題は意思決定であり、その意思決定をもたらす7つのアルゴリズムとして以下のものが紹介されている。
・シミュレーション:例えばモンテカルロ木探索法のように事態の予測を行って手を決めるもの
・ユーティリティ:パラメータ評価でもっとも高い効用をもたらす行動を選択するといったタイプ
・ルールベース:ルールリストを加えることで拡張ができる
・ステートベース:キャラクターの行動や環境の変化を状態遷移で表現する
・タスク:抽象的なタスクに分解して実行順序を制御する
・ゴール:多成目標から行動をさかのぼりながらパターン分けする
・ビヘイビア:戦闘、待機、闘争といった実行モードに分けて、各実行モードに弓を射るといったビヘイビアを1つまたは複数階層につなげる

 


 人工知能でキャラクターを変化させるアルゴリズムは、学習、適応、進化の3つ。ブラックボード、モジュール、協調の3つの原理による知性の表現。

 ベルシュタインの協応の原理。パラメータ群、行動シンボル群、アニメーションデータ群のキャラクターの階層的身体表現。メタAIでユーザの状態やスキルを知る。また、これからのゲームAIの方向性として、メタAIがキャラクターの密度とイベントの密度を動的に生成していく方向性が論じられている。

 文章は少々くどく、今まで得た知識や考えてきたことを、整理しながら次々アウトプット化している。分量が結構あり、論じられているコンセプトを追うのはゲームのAIの世界に慣れていない人間にとってはちょっと骨が折れるところもあったが、なかなか面白くて引き込まれた。

 

単行本、352ページ、技術評論社、2016/12/6

人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

人工知能の作り方 ――「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか

  • 作者: 三宅陽一郎
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2016/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)