密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

民族・文化

ユダヤとアメリカ - 揺れ動くイスラエル・ロビー (中公新書)

著:立山良司 概要 アメリカに住むユダヤ人の数はイスラエルの人口よりも多い。イスラエルとアメリカの結びつきは強いが、それはユダヤ系アメリカ人が多く、イスラエルの国益のためにアメリカの外交政策等にロビー団体として強い働きかけを行うことができる…

ゆる~くて、独創的なレポートが名調子で続く。「文庫本は何冊積んだら倒れるか」

著:堀井 憲一郎 率直に書いてしまうと、どうひいき目に見ても読んでも何の役にも立たない本で、かつ、調査のための行動範囲がほとんど自分の家の中本棚周辺で済んでいるという、なんとも独創的でゆる~い調査レポートがいくつも掲載された一冊である。 「坊…

「おバカ大国」オーストラリア だけど幸福度世界1位! 日本20位! (中公新書ラクレ)

著:沢木サニー祐二 アメリカ人、フランス人、イギリス人、フランス人、イタリア人、中国人、韓国人に比べ、オーストラリア人(オージー)だけの気質をテーマにした本はいままであまり見かけたことがないので手に取った。 刺激的なタイトルにあるように、特…

元号と日本人

著:プレジデント書籍編集部、監修:宮瀧交二 改元のタイミングでいくつか登場した元号に関する本のうちの一冊。最初に、元号とはという説明があり、その後は日本の歴史を元号ごとにたどった内容になっている。 令和が決まる前に書かれていて、年号の決定方…

日本プラモデル六〇年史 (文春新書)

著:小林 昇 日本のプラモデルの歴史を振り返った本。いわゆるプラモデルは、進駐軍や海外渡航が制限されていた中でアメリカに出張した日本人などによって持ち込まれた。日本でポリスレチンの製造が始まったのは昭和32年。それまでの日本のおもちゃはセルロ…

実は深い、ラジオ体操の歴史。『素晴らしきラジオ体操 』

著:高橋 秀実 「なぜって、あんた、ラジオ体操ですから」。 「雨が降ろうが雪が降ろうがあたしは休めません」。 「お百度参りと一緒です。行かないと気が済まないんです」。 「ラジオ体操してると死なないんです」。 「照れちゃダメよ。照れると背筋もピッ…

イルカと日本人: 追い込み漁の歴史と民俗

著:中村 羊一郎 日本人とイルカのかかわりの歴史は長い。各地の縄文遺跡からイルカの骨が出る例は少なくなく、中にはなんらかの儀式に使われたと思われる規則的な配列がみられるものもある。 本書は、かつて日本各地でおこなわれていたイルカの追い込み漁が…

隠れキリシタンとは、キリスト教とは異なるひとつの土着の民族宗教になっていったもの。「カクレキリシタンの実像: 日本人のキリスト教理解と受容」

著:宮崎 賢太郎 「キリスト教という異文化に初めて接した日本人にとって、キリシタン時代という時代は、その教えを理解するにはあまりにも条件が整っていませんでした。潜伏時代には、その環境はさらに悪化し、一人の指導者もいなくなり、教義という内容面…

毛の人類史 なぜ人には毛が必要なのか

著:カート・ステン、訳:藤井美佐子 脊椎動物の登場とともに、上皮が単層から多層に進化する。ここから、毛幹と毛包の構造が誕生する。 毛は温血性の生命体である哺乳類にとって断熱材であり体温を一定に保つために重要なものであり、感覚器としての役目も…

誰も調べなかった日本文化史: 土下座・先生・牛・全裸

著:パオロ マッツァリーノ 軽妙な文章で読ませる文化史の本。なかなか面白い。10のテーマが取り上げられている。 江戸時代の土下座とは今の平伏とは違うものだったし、実際にしなければならなかったのは将軍と御三家と将軍家から嫁いだ娘が通るときだけ。 …

「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わしておけ」。こ、これを映画にするのか?「このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉 」

著:魔夜 峰央 地味に話題になっていたので2016年に読みました。もともとは1980年代に描かれたマンガです。もう、思いっきり埼玉をもてあそんでいます。 ところがこの本、茨城県はもっとひどいことにされています。この本の主役は埼玉ではなく茨城かも、と思…

海外では無名。出身地のドイツでも知られていない。どうしてそれが日本で?「バイエルの謎: 日本文化になった教則本」

著:安田 寛 本書にあるように、1990年代に批判を浴びるようになってから人気はもうひとつになってきたものの、かつて日本で最初にピアノを習うときの教則本といえば「バイエル」だった。 本書は、この教則本を生み出したバイエルとは誰なのか、それが日本で…

かつてこの国には21万台もの人力車があった。マニアックで深い貴重な文化史。「人力車の研究」

著:齊藤 俊彦 重厚で読み応え十分の本である。1979年に出版された「人力車」という本の復刻版だという。書名とカバーデザイン以外は当時のままとし、収録資料については最新の製版技術を駆使して再現性を高めたとある。様々な資料を入念に調べ、まとめ上げ…

地獄とは?人は死んだらどうなるか?「絵本 地獄――千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵」

著:白仁 成昭、著:中村 真男、監修:宮 次男 一時話題になった絵本です。 怖いもの見たさで読んでみました。千葉県安房郡三芳村延命寺に所蔵されている絵を一冊の本にしたものです。 それらは、昔の人が、地獄とはこういうところだ! と知らしめるために描…

日本の捕鯨の歴史を知る。「くじら取りの系譜―概説日本捕鯨史」

著:秋道 智彌 日本の捕鯨の歴史を紹介した本。地方によってかなり差はあるものの、主要な漁場を中心にみるとざっと以下のような歴史をたどったようだ。・縄文時代:イルカは獲っていた跡がある。鯨については骨は出てくるものの漂着したものを利用しただけ…

博多あるある

著:岡田 大 著者は福岡県出身ではない。東京出身である。しかし、このような本は、よそ者の視線がないと作れないのだそうだ。博多のあるあるを取材して集めた本。挿絵を交えながら、ちょっとコミカルに、紹介している。例えば、次のようなことが載っている…

高精細画像で甦る 150年前の幕末・明治初期日本 ブルガー&モーザーのガラス原板写真コレクション

編集:東京大学史料編纂所 古写真研究プロジェクト 150年前に来日したブルガーとモーザーというオーストリア人2人が日本で撮影した270点の写真を、現代のデジタル技術を駆使して再現したものである。本書の解説によると、ここで再現されている映像の元は、…

ニッポンおみやげ139景

著:豊嶋操 外国人向けの観光通訳をしている著者が、自ら外国人に日本を案内してきた経験から喜ばれる日本のお土産を選んで紹介した本。 底に富士山が見えるグラス、江戸切子のグラス、箸、扇子、うちわ、着物帯、和紙や千代紙の小物、手ぬぐい、日本酒、こ…

発展途上国の中で見えてくる。主流派の経済システムの矛盾や問題を新自由主義的に解決しているもうひとつの資本主義。『「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 』

著:小川 さやか 「目標や職業的アイデンティティを持たず、浮遊・漂流する人生はわたしたちには生きにくいものにみえるが、タンザニアの人々はこうした生き方がもたらす特有の豊かさについて語る。それは、職を転々として得た経験(知)と困難な状況を生き…

日本人が、ついうっかりやってしまう。『外国人がムッとするヤバイしぐさ』

著:ジャニカ・サウスウィック、晴山 陽一 特にアメリカ人相手を念頭に、日本人同士だと常識ではあるが、外国人相手ではやらない方がいいしぐさや、言わない方がいいことを書いた本。見開きで左ページは絵なので、分量は少なく、あっさり読める。著者は米国…

結婚して熱帯の奥地に嫁いだ日本人女性のサバイバル日記。「タイの田舎で嫁になる―野性的農村生活 (JVCブックレット)」

著:森本 薫子 イーサンと呼ばれるタイ東北部のムクダハン県の農園に嫁いだ日本人女性が、日本の都会とは大きく異なるタイの田舎での暮らしについて紹介した本。薄くて、気軽に読める。自然の恵みと制約の中で、いわゆるスローライフといえる生活を営む人々…

歴史的埋蔵金研究家が残した埋蔵金探しの詳細な記録。「日本の埋蔵金 」(中公文庫)

著:畠山 清行 「私は、『埋蔵金を掘りたい』という人がくると、まず『およしなさい』ということにしている。なぜなら、一歩踏み込んだらなかなか抜けられず、家も屋敷も財産もぶちこんでしまうからだ。赤城のように、証拠めかしいものでも出ればなおのこと…

懐かしいあの時代。「東京ウォーカー CLASSIC 2000's ウォーカームック」

TokyoWalkerの2000-2009年の記事を抜粋して掲載したムック本。オールカラーで、当時を感じる記事がたくさん載っている。 ポケベルの技と比較 東京ディズニー・シー開園 横浜赤レンガ倉庫 マクロビオテック 六本木ヒルズ誕生 日韓ワールドカップ 大江戸温泉…

問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論 (文春新書)

著:エマニュエル・トッド、訳:堀 茂樹 「個人の自立は、何らかの社会的な、あるいは公的な援助制度なしにはあり得ません。より大きな社会構造があって初めて個人の自立は可能になります。『個人』とより大きな『社会構造』には、相互補完関係があるのです…

懐かしいあの時代。「東京ウォーカー CLASSIC 1990's ウォーカームック」

TokyoWalkerの1990年代の記事を抜粋して掲載したムック本。オールカラーで、当時を感じる記事がたくさん載っている。 スキー、湾岸、クルマ。 ジュリアナ東京。 レインボーブリッジ開通。 ティラミス、ナタデココ、パンナコッタ。 たまごっち。 新東京都庁ビ…

多くのエピソードとともに、フランス人の本質をユーモラスに説く。「新装版 フランス人 この奇妙な人たち 」

著:ポリー・プラット、訳:桜内篤子 読んでいる途中で、何度か吹き出しそうになった。フランスにやって来た外国人が不愉快にさせられた山のような体験談とエピソードに基づき、ユーモラスかつ具体的に書かれている。 元々英語圏向けに書かれた本だが、著者…

日本の伝統色を愉しむ ―季節の彩りを暮らしに―

監修:長澤陽子、イラスト:エヴァーソン朋子 桜色(さくらいろ)、水色(みずいろ)、紅藤色(べにふじいろ)、菖蒲色(あやめいろ)、鶯色(うぐいすいろ)、東雲色(しののめいろ)、茜色(あかねいろ)、朱鷺色(ときいろ)、夏虫色(なつむしいろ)、今…

アメリカ人はどうしてああなのか

著:テリー・イーグルトン、訳:大橋 洋一、吉岡 範武 「合衆国は、独特に内向きの社会であり、国務省を除けば他国に対しての意識があまりにも薄い。…(中略)…おそらく合衆国は必要とされている地理の知識を国民に授ける方法として、他国を侵略しているのだ…

広大な大日本帝国の勢力圏には、個性的で様々な鉄道網が延びていた。「大日本帝国の海外鉄道 」

著:小牟田 哲彦 よくまあ、こんなに詳しく調べたものである。そして、大日本帝国というのは広かったのだな、と改めて思いながら読んだ。台湾、朝鮮半島、関東州、満州、南樺太、さらに南洋諸島。 苦労の末に南北縦貫鉄道が作られた台湾。一貫して貨物収入が…

排泄物と文明: フンコロガシから有機農業、香水の発明、パンデミックまで

著:デイビッド ウォルトナー=テーブズ、訳:片岡 夏実 著者の計算によると、2010年に全世界ですべてのウシ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが排出した畜糞の量は141億3645万トンになるという。これは353億4112万5000立法メートルに相当し、標準的なサッカー場(幅60…