著:磯田道史
江戸時代の物価を現代感覚で表現するのは難しい。今のような大量生産・大量輸送が容易ではなかったから、相対的に労働の価値に比べてモノや食料の価値が高い。
それでもあえて、江戸時代中期(18世紀初頭)の収入や物価を現代感覚ではいくらになるのか、ということを目安として示したムック本である。すべてカラー印刷で、当時の風俗を示す浮世絵などが紹介されている。
収入に関しては、将軍(463万石・463万両・1兆3,890億円)、遠山景元(1050石・1050両・3億1500万円)、50俵3人扶持の武士(20.3両・609万円)、農民(13両750文・395万円)といったように目安が載っている。職人については大工が高く、石切・畳職人などは日給1万5000円ほど。髪結職人が月収60万円といった感じで紹介されている。
食品で目を引いたのは、シーボルトが29種載せているというように、鳥類が多く食べられていたこと。トキは駆除の対象になるくらい多かったし、鳩・雀・鴨・雉・ウズラなどが登場し、魚と比べてもそれほど高い値段ではない。そういう存在だったのだ。さらには高級食材として鶴も登場する。ドジョウ鍋、ウナギのかば焼き、醤油、桜餅なども登場する。
ひとつの目安としてみるには面白い。ただ、薄いムック本ということもあり、それほど突っ込んだ内容ではない。尚、この本は、その後、同じ趣旨で新書も出ている。
大型本、95ページ、宝島社、2016/3/10