密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

高倉健主演の映画にもなった表題作を含む8作品。平成の泣かせ屋、浅田次郎の傑作短編集。「鉄道員(ぽっぽや)」

著:浅田 次郎 この本は、通勤・通学の電車やバスの中で読むのはおすすめできない。実際、止めておいて本当によかった。 「平成の泣かせ屋」として知られる作家の短編集。 以下の8つの作品が収録されている。 鉄道員(ぽっぽや) ラブ・レター 悪魔 角筈にて…

名曲の数々を送り出した作曲家が残した著作。『昭和歌謡1945~1989 歌謡曲黄金時代のラブソングと日本人』

著:平尾 昌晃 懐かしい空気が漂っている。ずらりと並ぶ、戦後に生まれた昭和の名曲たち。これらを、年代別の傾向の変化や秘話と共に語った本。昔の歌を振り返る企画はTVではおなじみだが、本書は以下の点で特徴がある。 まず第一に、昭和を代表するメロディ…

ワークショップをうまく進めるにはどうすればよいか。「ワークショップデザイン――知をつむぐ対話の場づくり(ファシリテーション・スキルズ)」

著:堀 公俊、加藤 彰 ワークショップをどのように進めるかについて書かれた本。具体的かつ体系的に書かれているのが特徴である。 ワークショップには、組織型(問題解決型)、社会系(合意形成型)、人間系(教育学習型)およびそれらの複合型がある。 ワー…

首席侍女としてマリー・アントワネットを支え、ルイ16世に信頼され、のちにナポレオンからも厚遇された才女の激動の生涯。「カンパン夫人:フランス革命を生き抜いた首席侍女」

著:イネス・ド・ケルタンギ、訳:ダコスタ吉村花子 「私たちが生まれる時代を選んだのではありません。天の思し召しによって、試練の時代に生まれたのです」 (カンパン夫人からオルタンス・ド・ボアルネ宛の手紙より)。 ジャンヌ=ルイーズ=アンリエット・…

サッカー日本代表センターバックでプレミアリーグ・サウサンプトンFC所属の吉田選手の苦闘の日々。「吉田麻也 レジリエンス――負けない力 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)」

著:吉田 麻也 読みながら、サッカーの世界トップリーグのひとつイングランドのプレミアリーグで、厳しいポジション争いをしながら苦闘している著者の姿が浮かぶようだった。サッカー日本代表のセンターバックでもある吉田麻也選手の本。 子供のころからプロ…

サムライDays、欧州Days

著:吉田 麻也 サッカー日本代表のCB吉田麻也の本。書き下ろしとブログからのミックス。他の代表選手の本とは大きく異なり、ユーモア精神旺盛で、お茶目で、コミカル。 3人とも女の子でも通用する名前がつけられた男3人兄弟の末っ子。先生から年齢をたずねら…

人力車夫は速すぎてプロ扱いとされ、陸上大会から締め出された。学徒出陣の壮行会場にもなる。旧国立競技場激動のドキュメント。「国立競技場の100年: 明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ」

著:後藤 健生 江戸時代に数多くの武家屋敷があった場所は、明治維新後に大名達が去ってまとまった土地となる。皇室に買い上げられていた代々木の御領地も、元々そのような場所で、現在は森になっている部分も、かつて伊井家の庭園があったところ以外は一面…

減反とはなんだったのか。2018年に終了する減反政策を振り返る。「減反廃止 ―農政大転換の誤解と真実」

著:荒幡 克己 40年以上も続いた日本の減反政策は2018年をもって終了する。しかし、この減反政策が日本の農業に及ぼした影響はあまりに大きい。減反政策とはなんだったのか、どういう経緯でどのように実行されたのか、諸外国の農業のトレンドと何が同じで何…

ファシリテーション入門〈第2版〉 (日経文庫)

著:堀 公俊 ファシリテーションとは、集団による問題解決、アイディア創造、合意形成、教育・学習、変革、自己表現・成長といった、知識創造活動を支援し促進する活動だという。ファシリテーターは、コンテンツではなく、プロセス(過程)を舵取りする。そ…

かつてこの国には21万台もの人力車があった。マニアックで深い貴重な文化史。「人力車の研究」

著:齊藤 俊彦 重厚で読み応え十分の本である。1979年に出版された「人力車」という本の復刻版だという。書名とカバーデザイン以外は当時のままとし、収録資料については最新の製版技術を駆使して再現性を高めたとある。様々な資料を入念に調べ、まとめ上げ…

「Jポップ」は死んだ (扶桑社新書)

著:鳥賀陽 弘道 1998年と2016年を比較すると、日本のCDをはじめとするオーディオレコードの売り上げは6075億円→1777億円に激減した一方で、コンサートの売上は710億円→3100億円に激増したという。2016年の優良音楽配信は528億円。 また、著作権料でみると、…

撮らせなければいい、だけでは解決しない。深刻なリベンジポルノ問題。「リベンジポルノ―性を拡散される若者たち 」

著:渡辺 真由子 政治家やタレントの秘密の写真が雑誌に暴かれることは以前もあった。しかし、今や一般人でも「リベンジポルノ」は身近な問題になっている。背景にあるのは、デジタルカメラやスマホのカメラ、さらにはインターネットの普及である。 データは…

科学の困ったウラ事情 (岩波科学ライブラリー)

著:有田 正規 科学研究分野の問題点と著者の考える方策を書いた本。雑誌の連載を一冊にまとめたもの。著者は生命情報科学を専門とする理学博士。主に生命科学の分野をテーマにした本だが、嘆きを交えた半分エッセイのような感じで書かれており、特に前提知…

雪の結晶は、似ているものはあっても、全く同じ形と大きさのものは2つと無い。「雪の結晶: 小さな神秘の世界」

著:ケン・リブレクト、訳:矢野 真千子 雪の結晶は、似ているものはあっても、全く同じ形と大きさのものは2つと無いという。実際、星形ひとつとっても、成長の分かれ道になるポイントは100くらいあるからその組み合わせは膨大な数になる。六角形、針形、矢…

日本の醜さについて 都市とエゴイズム

著:井上 章一 ヨーロッパの整然とした街並みと比べ、日本の街並みが雑然としていることを取り上げ、それをもって日本人は和を持って貴しとなすというは正しくなく、無秩序とエゴの国だとしている本。この著者は、かつて「京都ぎらい」という本がヒットして…