著:渡辺 真由子
政治家やタレントの秘密の写真が雑誌に暴かれることは以前もあった。しかし、今や一般人でも「リベンジポルノ」は身近な問題になっている。背景にあるのは、デジタルカメラやスマホのカメラ、さらにはインターネットの普及である。
データは簡単にコピーできる。一度拡散すると、次々コピーされて広がる。ニュースになった写真を一目見ようと探す人も珍しくない。著者によると、リベンジポルノには以下の2種類があるという。
・恋愛(プライベートな関係)に起因するもの
・性産業(ビジネスでの関係)に起因するもの
撮らせなければいい、と言うのは簡単だ。実際、撮らせた方が悪いという主張はよく聞く。しかし、今やスマホで簡単に写真が撮れる時代である。それに慣れて育った世代が、愛し合い互いを信じあっている状態で、断るのは現実的には難しい。俺のことを愛してないのか?と言われることもある。現代では、このようなケースにおいて被害者に責任を負わせることは対策とはいえないと著者は主張する。
若い女性の性的な写真は金になるという現実もある。「アイドルになれる」などと持ち掛ける。お小遣いが欲しいという願望につけ込む。そして一度性的な写真を撮られてしまったら、たとえそれが本人の一時の気の迷いで気軽に応じただけであっても、性産業の中で取引対象となって拡散する。
中には暴力的な行為をともなって無理やり写真を撮られたというケースもある。何年も前に撮られた写真が、知り合いから「これ、あなたじゃない?」と言われて見せられることもある。性産業で働いたことがないのに勝手にそのようなビジネスの写真で使われているケースすらあるという。
深刻化する被害を受けて、被害相談を受け付ける窓口の中には、「セーフライン」のように画像削除要請まで一貫して引き受けるものも出てきた。プロバイダ事業者に削除要請を出すこともできる。
TwitterとFacebookは2015年にリベンジポルノの掲載を禁止した。2014年には「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」もできた。しかし、そもそも相談できる窓口の数は少ない。若者にとって相談のハードルも高い。
何より、本人が気づかないうちにLINEのグループで回されているというようなことがある。
こういう時代だから、撮らせないというのは難しい。ただ、知らない人には撮らせないとか、デジタル画像やネットが持つ特性を知っておくことも大切だという。警察による補導は、本当は声をかけるおじさん側に対してすべき、などと述べてあるところもある。何人かの被害者の体験談も収められている。
単行本、216ページ、弘文堂、2015/11/19
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