著:池谷 敏郎
著者が院長を務める内科・循環器科専門のクリニックには、いくつも病院を替えて渡り歩く患者が数多く来るという。どうしてそのような患者が世の中に大勢いるのか、その背景には何があるのか、セカンドオピニオンのあり方や病院選びの基準など患者はどのようにすればいいのかについて書かれた本である。
検査してもなんともないのに足が冷たいと訴え、次々病院を替える人。心臓が痛いと訴え、検査してもなんともないが医者も後で責任を問われるのは避けたいので、とりあえずニトログリセリンを処方しておく。セカンドオピニオンをはきちがえている人。その分野の専門知識が不足しているのに医師免許の上では問題がないので専門医を掲げている医者。医療の現場ではそのようなミスマッチがたびたび発生する。
原因としては、大きく3種類あるという。まず第一に、医療を行う側の問題。患者の話を聞かない医師や、その背景になっている診療点数制度といったことが関係する。第二に、患者側の問題。偏った知識を詰め込み、がんの治療を拒否して症状を悪化させてしまう人もいる。第三に、人間の体と心の複雑さに起因する問題で、神経性のものが特定の部位の痛みや不調につながるケースがあるし、意外な病気が隠れている場合もある。
信頼できるかかりつけの医者を作ること。ノートをつけて自分の症状を的確に説明できる力をつけること。セカンドオピニオンは主治医の協力を受けて行う方が効率的だし、主治医に気兼ねする必要もない。医師との相性を見極めること。がん検診の方法。日々体のメンテナンスを怠らず健康寿命をのばすようにすること。そのような対処方法が書かれている。
特別な内容ではなく、前提知識も不要。病気や身体の問題を抱えたときに、医者選びや付き合い方は重要になる。また、そもそも、健康寿命をのばせればそれに越したことはない。そういった点で不安を抱えている人にとっては、参考になるかもしれない。
新書、256ページ、集英社インターナショナル、2018/12/7
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