密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

嘘だらけシリーズの第1弾。『嘘だらけの日米近現代史』

著:倉山 満

 

2012年に出版され、その後、続編が次々出て大ヒットシリーズになった「嘘だらけのXXX史」シリーズの記念すべき第1弾。刺激的な倉山節が、あちこちに顔を出す。

 

「クリントンの主な世界政策を振り返りましょう。北朝鮮を空爆できず核武装を許し、中国重視政策でその膨張を許し、ソマリア派兵をしたものの十九人の死傷者が出た時点でみっともなく逃げ帰って大恥をさらし、スーダンとアフガニスタンへの不用意な空爆でアルカイダを怒らせ、イラクへの中途半端な介入で中東情勢をこじらせ、ユーゴ問題への深入りであやうく世界大戦を起こしそうになり、中南米に秩序をもたらしてきたペルーのフジモリ政権を転覆させました」。

 

 第二次世界大戦の勝者はソ連だった、というような解説は、まったくその通りであると思った。J.F.ケネディやクリントンの政策の問題や、ウッドロー・ウィルソンについての解説も面白かった。また、「(かつて日本がベトナム戦争でそうしたように)ベトナムと戦っているアメリカ軍に基地を提供することは集団的自衛権の行使以外の何ものでもありません」というような記載は、昨年の集団的自衛権を巡る議論を先取りしているかのようだ。

 

 もっとも、著者がこれぞ通説とは違う本当のこと、と言っているものの中には、アメリカでは普通に教科書に載っていることもある。例えば、アメリカ独立戦争はフランスが対英包囲網を敷いたおかげで勝利できたというようなことは、そもそもそのような政治的な側面をわかっていないと、ワシントンのように自ら軍隊を率いて戦っているわけではない単なる文人のフランクリンがアメリカ独立戦争の英雄の一人とされているのはなぜなのか理解できない筈だ。

 

 あと、見方が一方的すぎる記述もあちらこちらにある。ただ、歴史を多角的に見る視点の大切さを強く感じさせてくれる。なにより、面白い。

 

新書、199ページ、扶桑社、2012/9/1

嘘だらけの日米近現代史 (扶桑社新書)

嘘だらけの日米近現代史 (扶桑社新書)

  • 作者: 倉山満
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2012/09/01
  • メディア: 新書
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