著:石井 光太
東南アジア、南アジア、中東、アフリカといった世界各地域の貧困層のリアルな生活を文字通り密着取材し、スラム編、路上生活編、売春編の3つに分けて多角的な視点からリアルに説明している本。
スラムで密造酒で酒盛りして体調を崩す。泊まっていたぼろ小屋が豪雨で流される。シンナーを吸っているストリートチルドレンと話し、マフィアや戦場の少年兵にインタビューし、物売りにまがいものをつかまされ、売春宿で女性たちに囲まれながら話を聞く。
何度も危険な目に遭った著者が実際に足を運んで経験して肌で知った異国の貧困地域についての話や様々なエピソードがたくさん盛り込まれている。加えて、著者の名調子やユーモアもあって、ぐいぐい引き込まれる。
過酷な環境の中で生きる人々のたくましさや、あまりにも厳しい現実に唖然とさせられる。これが、本当の世界の貧困層の姿なのだということを、これでもかというほど、強烈に突きつけられる。
「スラムに生きる人たちだって用を足しますし、恋愛だってしますし、セックスだってします。もちろん、離婚だって浮気だって出産だって。画一的な視点では見えてこない、こうした『あたりまえの現実』を、より多くの視点から示したいと思ったのです」。
いろいろなことを考えさせられた。特にストリートチルドレンをはじめとする子供たちや、女性たちの生き方についてはショックを受けた。まさに、世界リアル貧困学講義である。
文庫、323ページ、新潮社、2011/6/26