密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

Amazon Web Services企業導入ガイドブック -企業担当者が知っておくべきAWSサービスの全貌から、セキュリティ概要、システム設計、導入プロセス、運用まで-

著:荒木 靖宏、大谷 晋平、小林 正人、酒徳 知明、高田 智己、瀧澤 与一、山本 教仁、吉羽 龍太郎

 

 Amazon Web Services(AWS)についての本は珍しくないし、AWSのサイトにはWhite Paper類がたくさん掲載されている。どれから読めばいいのか戸惑うくらいである。

 

 この本は、技術的な本というよりは、AWSは何がいいのか、どういうステップで導入を検討すればいいのか、TCOはどう計算すればいいのか、オンプレミスのシステムからの移行はどう考えればいいのか、災害対策の環境やバックアップや障害対策はどのように考えればいいのか、運用監視はどうするのか、クラウドの特徴を最大限活かすポイントはどこにあるのか、ということについてAWSの関係者や識者によって書かれた本である。

 

 想定される用途としては、「うちもクラウドをやれ」「AWSの導入を検討しろ」と言われたIT部門の関係者が、企画・計画作りの際に参照して役立てるための参考書、と考えるのがぴったりくるように思われる。もちろん、お客様からクラウドの導入検討を相談されたSIerや、クラウドの上流コンサルを取り入れる場合にも役に立つ。実際、技術の本というよりは、プランやコンセプトを検討するために役立つ記述が多い。例えば、以下のような「クラウド導入の一般的な流れ」のような内容である。

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(出典)https://media.amazonwebservices.com/jp/.../docs/TE-02-Tokyo-Summit-2015.pdf

※本書に掲載されているのと同じ図

 

個人的に特に印象に残ったのは、終盤に出てくる「アーキテクチャの最適化にむけた指針」である。以下の7つに分けて説明がある。

  1. Design for Failure(障害に備えた設計)
  2. Loosely coupling sets you free(粗結合かつ凝集度の高いシステム設計)
  3. Implement Elasticity(伸縮自在性を取り入れる)
  4. Build Security in every layer(セキュリティを各レイヤーで構築する)
  5. Don’t fear constraints(制約を受け入れて、うまく利用する)
  6. Think Parallel(並列度をあげるように設計構築)
  7. Leverage different storage options(様々なデータストアのオプションを活用する)

 

 AWSのサイトにある膨大な資料について、それぞれの用途に合ったものをピックアップして紹介してあるので、そのためのリファレンス用としても使える。一部を紹介すると、以下のようなものになる。

 

AWSホワイトペーパー

https://aws.amazon.com/jp/whitepapers/

AWSアーキテクチャの紹介

https://aws.amazon.com/jp/architecture/

エコノミクスセンター

https://aws.amazon.com/jp/economics/

AWS TCO計算ツール

https://awstcocalculator.com/

Simple Monthly calculator

http://calculator.s3.amazonaws.com/index.html?lng=ja_JP

 

 これから本格的にAWS導入を検討する人向けなので、前提知識はそれほど高度なものは必要ない。一般的なIT部門やIT企業で働いている人であれば特別技術に詳しい人でなくても読み下せるレベルの内容だ。ただ、これを企業のIT戦略に正しく反映して実現するのは、けして容易ではないように思われる。内容自体はよくまとめられており、目的に合致した人が手に取れば、使える本であるように思う。

 

単行本、 240ページ、マイナビ出版 、2016/6/10

 

Amazon Web Services企業導入ガイドブック -企業担当者が知っておくべきAWSサービスの全貌から、セキュリティ概要、システム設計、導入プロセス、運用まで-

Amazon Web Services企業導入ガイドブック -企業担当者が知っておくべきAWSサービスの全貌から、セキュリティ概要、システム設計、導入プロセス、運用まで-