密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

GE(ジェネラル・エレクトロニクス)を立て直した奇跡の経営者。「ジャック・ウェルチ わが経営 <上>」

著:ジャック・ウェルチ、著:ジョン・A・バーン、著:宮本 喜一

 

「ナンバーワンかナンバーツーになることは、単なる目標にとどまらない。それは必須条件だ」。

 

「(GEが目指すのは)GNPを牽引する機関車であって、それに引っ張られている貨車ではない」。


 巨大企業GE(ジェネラル・エレクトロニクス)に黄金時代をもたらしたジャック・ウェルチの本。米国の企業によくある外部から雇われたCEOではなく、内部から昇りつめた人である。若いころの仕事ぶりや、出世の経緯についても書かれている。

 ウェルチは、その辣腕が称賛されたのと同時に良くない評価の社員を遠慮なく切り捨てたことで批判も浴びた。具体的には、社員をA,B,Cの3つのランクに分けて、Aランクについては高待遇で報いる一方でCランクは排除するという手法である。しかし、単純に結果だけですべてを判断しているのかというとそうでもなく、「思い切ったスイングをして空振りした人」については、必ずしもCランクにはならないらしい。

 実際、本書をよく読むと、大企業の立場に安住しようとする官僚主義や事なかれ主義こそウェルチがもっとも警戒していたものなのだということがわかる。

 大企業の利点は多少空振りしたところで会社がつぶれるわけではないところにあるのだから、いろいろな事業のアイディアを積極的に出し合って挑戦する雰囲気を作り、成功した人には高い評価で報いるようにすべきだと述べている。

 ナンバーワンかナンバーツーになれない事業については売却するか手を引く、という経営哲学も有名だ。しかし、本書を読むとそれにも限界があることを素直に認めており、次のようにも語っている。

 

「トースターやアイロンの場合には、トップになってもたいした意味はない」。

 

 国際金融サービスのような部門やニッチであることが強みになる分野においても同様に1位か2位という基準で経営を行っていたわけではなく、ウェルチはそのような分野では、必ず巣も自分の哲学に固執しない事業判断に切り替えて成功に導いているところも注目される。日本では、そのような点が誤解されているのではないかと思う。

一世を風靡した、ウェルチの経営手法の一端を理解するのに役に立つ本である。

 

単行本、400ページ、日本経済新聞社、2001/10/22

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