著:帝国データバンク情報部 藤森徹
経営に破綻をきたした企業の事例をまとめた本。日本経済新聞電子版の連載が元になっている。著者は帝国データバンクで倒産を扱う情報部に所属している。
老舗企業、短期間に急成長した会社、千鳥屋や白元など多くの人が名前を知っている企業など、多くの会社が登場する。
会社がダメになる背景としては、急激な景気変動、円高、東日本大震災といった外部環境の影響を強く受けたもの、新事業への拡大が失敗したもの、財テクで大きな損失を出した例など、理由は様々だ。日本経済の長期低迷の影響が間接的に関係している例も多い。
また、代替わりがうまくいかなかったことや、経営管理による会社の私物化や財務のずさんさが指摘される例もある。創業者が掲げた本業への専念を呼びかける社訓が軽視されてしまう例もある。不正が関係する例も少なくない。
いくつかの教訓も導き出せる。古い業態といっても経営や商品は絶えず変化させていかないと生きていけないので、時代に合わせた変化は必要になる。しかしその一方で、新事業というのは初めてやることなのでどうしてもリスクや想定外のことがあるのだということを覚悟しておく必要がある。
輸出入が大きな割合を占める事業の場合には為替デリバティブを有効に活用すること。不測の事態に備えてメインバンクとの良好な関係を築いておくこと。経営の透明性を確保しておくこと。
同族経営はどうしても経営者へのチェックの目が行き届きにくいところがあり番頭役が重要。
淡々と書かれていて少し物足りなさを感じるくらいだ。面白い本かというと、そういうことはない。逆に余計な脚色をせず事実とそこから導き出せることを示すことに徹しているともいえる。ただ、内容的にちょっと浅い感じはする。それにしても、企業を長期間にわたって存続させるというのは、なかなか大変なことである。
新書、236ページ、日本経済新聞出版社、2017/4/11