著:村松 和明
若くして亡くなった天才画家、村山槐多(1896-1919)の生涯を作品とともに紹介した本。ムック本サイズで、オールカラー印刷。100ページに満たないが、多くの作品が載っている。また、槐多が残した日記と詩文も適時引用されている。
また、この本は、ここ数年、数多く発見されたという槐多の未公開作品とその研究成果が反映されていることが特徴となっている。特に、初期の作品が多く見つかっているという。
著者は、学芸員になりたての頃に、一時山本鼎の作とされた「日曜の遊び」という作品の制作経緯を調べ上げ、鼎の下絵を元に槐多が描いたことを明らかにしたことがあり、それ以来30年以上にわたってこの画家についての研究を行ってきたという専門家。
村山槐多は早熟で頭がよく、自由奔放な性格だった。小学校3年生のころに絵を描き始め、中学時代は文学に目覚める。天真爛漫な性格で、級友たちからは愛されたという。14歳の時に槐多の才能にほれ込んだ従妹の山本鼎が、油絵具一式をプレゼント。本格的に画家を目指す。
水彩画、デッサン、そして油絵。人物、風景、静止画。独特の魅力を持ったタッチと色使い。京都時代の作品でクレパスのように見えるものはパステルを用い、独特の工夫で塗り込んでいたという。
海外の美術書の原書を図書館で読んでノートにまとめて研究する。槐多は、みずから「アニマリズム」という言葉で、もっと野蛮に勇猛な絵を描くことを宣言した時期もある。失恋。大島。岸田劉生の存在。
「裸婦」「ダリア」「赤ダリア」「植物園之景」「バラと少女」「湖水と女」。房州で生み出された傑作の数々。晩年の見事なデッサンと自画像。
短い生涯の間に生み出された村山槐多の作品の魅力と変遷その背景を、ギュッと詰め込んだ良質なガイドとなっている。
単行本、95ページ、東京美術、2019/6/8
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