密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

もっと知りたいサルバドール・ダリ (生涯と作品)

著:村松 和明

 

 芸術家の生涯をその作品と共に紹介した「もっと知りたい」シリーズの一冊。自らを「天才」と呼び、特異な作品の数々を世に出したサルバドール・ダリ(1904-1989)を取り上げている。

 スペインのカタルーニャ地方に生まれ、彼が生まれる9か月前に死んだ兄と同じ名前を付けられたこと。妹アナ・マリアへの偏愛。パブロ・ピカソジョアン・ミロに高く評価される。ミロはダリが画家になることに反対だった父親を説得するために訪問もしている。シュルレアリストのグループたちとの交流。情熱的な恋に落ちたガラとの出会いと結婚。有名な「記憶の固執」の反響。死とエロティシズム。フロイトへの心酔。夢や無意識のインスピレーション。新天地アメリカでの旺盛な活動。内乱。戦争。崩壊と誕生。パン。神秘主義。スペインへの帰還。ガラの浪費を賄うための金銭的な意味合いの大きな活動。晩年。

 オールカラー。薄いが多くの作品が載っている。日本にもこんなに作品が多いとは知らなかった。諸橋近代美術館は340点を有しており、これは世界で3番目の規模だという。解説の文章は、奇をてらうことなく、真面目に書かれている。ダリというと、特徴的な作品とともに奇怪な言動によるイメージもかなりあるが、著者によると、誇張と虚飾に満ちた自伝などには功罪両面があり、攪乱されたイメージが正当な評価を妨げてきた面もあると述べられている。

 

単行本、80ページ。東京美術、2016/6/30

 

もっと知りたいサルバドール・ダリ (生涯と作品)

もっと知りたいサルバドール・ダリ (生涯と作品)

  • 作者: 村松和明
  • 出版社/メーカー: 東京美術
  • 発売日: 2016/06/30
  • メディア: 単行本