著:中尾 隆之
かつては旅の土産として、木彫り熊・人形・こけし・陶器などの民芸品が好まれたが、最近はそのようなモノは、飾る場所をとることや趣味の問題で以前ほどは好まれなくなり、手軽にすぐ食べられる銘菓が人気だという。
本書は、全国を旅して5,000種類以上の銘菓を食べてきた人が書いた銘菓案内の本である。著者は、テレビチャンピョンの「全国お土産銘菓通選手権」で優勝したこともあるという。
この本で取り上げられている銘菓は、以下の選考の基準に基づいているという。
- 歴史・風土などの地域性がある
- 老舗ならではの風格と品格がある
- 日保が3~4日以上ある
- 個包装で風味と清潔感がある
- 大きさ・重さ・見栄えが良い
- 人気・話題性がある
- 個性的でユニーク・希少性がある
百銘菓となっているが、文章の中でここもおいしい、というような形で言及されている店もあるので、それらも加えるともっとある。また、「もみじまんじゅう」「赤福」「白い恋人」「紅いもタルト」「東京ばな奈見ぃつけたっ」「鳩サブレー」「ままどおる」「うなぎぱい」のような、今更感がある有名どころも結構多い。洋菓子の比率は少なめである。
テーマごとに9つの章に分けて紹介してある。個人的に興味をそそられたのは、最初の1章「死ぬまでに食べたい絶品銘菓15」と最後の2章。「唯一無二のユニーク銘菓10」「本当は教えたくない我が偏愛銘菓10」である。いくつか、自分のメモを兼ねて紹介しておく。
- 「小城の朔羊羹」(佐賀県小城市・村岡総本舗)は、別製注文・要予約・年6回だけの限定販売。
- 「八雲小倉」(島根県松江市・風月堂)は、午前中に行っても売り切れているという。
- 「はこだて大三坂」(北海道七飯町・菓子舗喜夢良)も、入手困難な絶品。
- 「シャルロット・オ・ショコラ」(福岡県福岡市・パティスリーイチリュウ)は、世界料理オリンピック銀メダルで福岡県が指定する現代の名工の作。
- 「玉だれ杏」(長野県長野市・長野 凮月堂)は、善光寺名物。
- 「極上本煉羊羹」(和歌山県和歌山市・総本家駿河屋)は、慶長4年(1599年)から受け継がれている。
- 「鶏卵素麵」(福岡県福岡市・松屋)は、黄色いそうめんみたい。
- 「一〇香」(長崎県長崎市・茂木一まる香本家)は、中が空洞。
- 「夏蜜柑丸漬」(山口県萩市・光國本店)は、なつみかんをくりぬいて白羊羹を入れた手間のかかった逸品。
- 「陸乃宝珠」(東京都中央区・源 吉兆庵)は、マスカット丸ごと。夏季限定商品だという。
- 「丸柚餅子」(石川県輪島市・柚餅子総本家中浦屋)は、半年かけて作られている。
- 「茶壽器」(京都府京都市・甘春堂)は、茶器状で、3回くらいならこれでお茶が飲めるという。
- 「塩味饅頭」(兵庫県赤穂市・元祖播磨屋)は、ぜひ食べてみたい。
- 「元祖冨貴豆」(山形県山形市・まめや)は、完熟豆の皮をむいて砂糖と塩だけで炊き上げた。
- 「愛宕下羊羹」(静岡県掛川市・愛宕下羊羹)は、午前中に売り切れごめん。
- 「長八の龍」(静岡県松崎町・梅月園)は、こしあんと粒あんを2層にして和三盆をまぶしている。
よく調べて書いてあって、食べた感想も関心をそそる。百銘菓はすべてカラー写真付きである。
新書、224ページ、NHK出版、2018/7/6