著:藤井 一至
アメリカ農務省の土壌分類(Soil Taxonomy)に基づき、地球上の土の特性について説明した本である。
この本の特徴としては、大きく2点ある。まず第一に、12種類のすべてにおいて、著者が代表的な場所に赴いて調査した結果と共に解説が行われている点である。いくつか印象的なエピソードも載っていることである。第二に、地球の人口が100億人になることを想定した場合、食糧生産の基礎になるのが土であるという観点を入れている点である。誰もが関係する食べ物に結びつけてあるので、土の意義について重要なものとして想起しやすい。
本書て中心に据えて説明されている12種類の土壌分類とは以下のものである。それぞれ、著者が撮影したカラー写真が添えてある。
1.永久凍土(ジェリソル)
2.泥炭土(ヒストソル)
3.ポドゾル(スポドソル)
4.未熟土(エンティソル)
5.若手土壌(インセプティソル)
6.黒ぼく土(アンディソル)
7.チェルノーゼム(モリソル)
8.ひび割れ粘土質壌(パーティソル)
9.砂漠土(アリディソル)
10.強化風赤黄色土(アルティソル)
11.粘土集積土壌(アルフィソル)
12.オキシソル(オキシソル)
永久凍土が農業に向いていないのは素人でも直観的に理解しやすいが、例えば同じ熱帯であっても、火山灰質のジャワ島は農業に適しているのに対して、すぐ近くのボルネオ島は土が農業に適しておらず、そのため人口密度もかなり低いという。
粘土集積土壌、強化風赤黄色土、若手土壌は合計で陸地面積の3割に満たないが、農地の半数を占める。チェルノーゼム、ひび割れ粘土質壌、砂漠土も陸地面積の2割程度だが農地の4割を占める。つまり、12種類のうちの半分で地球上の人口の9割が養われていることになる。
また、人口密度は降水量と関係が深く、あまり雨が降らないのに人口密度が低い場所には必ず大河がある。塩類集積(雨に流されることなく地下水などでくみ上げた水に少し混じっている塩分が土に次第に蓄積すること)がなく、水があれば、砂漠土でも農業はできる。言い方を変えると、必ずしもすべての条件がそろっていなくても、寒冷地でなく土さえ悪くなければ、化学肥料と地下水で力わざで農地にしてしまっている場所は世界的に結構あることに気づく。
日本に多いクロボク土および日本の気候風土との関係についても説明してあり、日本の気候風土が土も独特なものにしていることもわかる。一見地味な本だが、なかなか面白かった。
新書、224ページ、光文社、2018/8/17