著:村上芽、渡辺珠子
近年、日本でも浸透をみせているSDGs(持続可能な開発目標)について説明し、社会貢献の伴うビジネスやイノベーションの例を紹介した本である。新書サイズで、一般向けに書かれており、特に前提知識が無くても読める。
SDGsは、貧困を終わらせ、地球を保護し、すべての人々が2030年までに平和と繁栄を享受することを確保するためのアクションへの普遍的な呼出しとして、2015年にすべての国連加盟国によって採択された。以下の17のグローバル目標と169の達成基準より構成されている。
1:あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
2:飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3:あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
4:すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する
5:ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
6: すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
7: すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8: 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
9: 強靭なインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、技術革新の拡大を図る
10: 国内および国家間の格差を是正する
11: 都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする
12:持続可能な消費と生産のパターンを確保する
13:気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る
14:海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する
15:陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る
16:持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する
17:持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
持続的な社会を作るという国連のイニシャチブであり、これはけして経済活動と相反するものではない。むしろ、従来とは異なるイノベーションを促進したり、新たなビジネスを見つけるチャンスになる。細目にいくと難しくなるが、その時は基本概念に立ち戻って考えることがよい。
本書の後半では、日本で特に関心の高い9つの分野の事例を取り上げて説明している。女性の就業支援やスキルアップ。教育格差を縮小させる。従業員の健康管理。塩尻市にみる安全・安心の街づくりの例。再生可能エネルギーへのシフト。食品ロス削減の試み。プラスチックごみを減らす。森林や生態系の維持。科学技術イノベーションを生み出す取り組みや支援と科学技術イノベーションを活用した課題解決の取り組み。
また、著者たちが日ごろ行っているセミナーからのフィードバックも取り入れて書かれているということだ。
こうしてみると、SDGsで掲げられている目標は、われわれの生活に近いものが多いことに気づく。われわれが社会的な問題として感じていることが体系立てられている感じである。
新書、240ページ、日本経済新聞出版社、2019/6/15