著:エリック・リース、翻訳:井口 耕二、解説:伊藤 穣一
「つまりリーン・スタートアップとは、サイクルタイムの短縮と顧客に対する洞察、大いなるビジョン、大望とさまざまなポイントに等しく気を配りながら、『検証による学び』を通して画期的な新製品を開発する方法なのである」。
起業やイノベーションの成功率は一般的に低い。マネージメントに比べると、参考になる手法も十分確立されているとはいえない。本書は、社内での新事業立ち上げも含めた起業において、その成功率を高める方法について解説を試みた本である。
著者は3社目の起業であるIMVUの共同創業者として名を上げ、その後ビジネス関連のイベントやビジネススクールで講演を重ねているという。
ベースになっているのは、トヨタの生産方式。そのプロセスを起業家のビジネスプロセス全般に応用したのが、「リーンスタートアップ」である。
スタートアップにおいては、製品やマーケティングや業務改善のチューニングが頻繁で、そのために多くの時間が割かれる。このため、最初から複雑な計画を立てようとするのではなく、シンプルに始めると同時に、構築―計画―学習のフィードバックループを意図的に継続し、ピボットと呼ぶ方向転換の可能性を念頭に置きながら、柔軟かつスピーディに、製品開発や企画やプロセスを調整してビジネスの成長エンジンを適切で現実的で力強いものに変えてゆくことを説いている。
例えば、初期の製品は、なるべく早く、コンシェルジュ型実用最低限の製品(MVP)として、平均顧客ではなくもっとも欲している顧客に提供する。そして、構築―計画―学習のプロセスのループを回す。
実験が広報活動にもつながる。会計は、財務会計と管理会計だけでは間に合わないので、革新会計という手法を導入する。コフォート分析と呼ぶ新製品と新たに接する顧客グループの成績に着目したり、アジャイル開発を導入して1ヶ月ごとにひとつのタスクを完了させるスプリントを行ったり、競合より早く学ぶ組織にする、バッチサイズを小さくする。
新規顧客の獲得率が解約率を上回る状態を作ることで、複利の作用で成長が加速する成長エンジンとする。ただし、時間のために品質は犠牲にはしない。「5回のなぜ?」を導入するが、「5回の誰?」にならないように注意する。
破壊的イノベーションについても言及している。前提として組織に以下の3つの特質をもたせ、イノベーションが自由に行える砂場を作って、まずは小さくはじめる。
・少ないが確実に資源が用意されていること
・自分たちの事業を起こす権限を有していること
・成果に個人的な利害がかかっていること
そもそもイノベーションのプロセスは、「まだ分かっていないことを学ぶ」ということが重要であり、そのためにはリーンスタートアップの手法が有効なのだ、としている。
単行本、408ページ、日経BP社、2012/4/12
リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす [ エリック・リース ]
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