密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

オープン・イノベーションの教科書――社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ

著:星野 達也

 

 少し前の本である。今では日本でもビジネス用語として定着してきた感の強い「オープン・イノベーション」について解説した本。昨今はIT分野でもオープン・イノベーションが盛んだが、この本は基本的にモノ作りに関する話が中心である。

 

 オープン・イノベーションという言葉は、ハーバード大学教授だったヘンリー・チェスブロウが2003年に出版した本で紹介したことをきっかけに、幅広く知られるようになったという。

  著者は、オープン・イノベーションが広がってきた理由として、以下の3つを挙げている。

 

1.知識労働者の増加と分散

2.社外組織の技術力向上

3.仲介業の成立

 

 また、オープン・イノベーションにはいくつかタイプがあり、以下のように整理されている。

 

1.自由参加のコンソーシアム型:知見を持ち寄って創造する。利益は参加者で享受。

2.戦略的提携型

(1)技術探索型:外部の技術を探して取り込む

(2)技術提供型:保有する技術の売り込みや技術募集への提案

 

技術探索型のオープン・イノベーションについては、丸まる1章をあてて書かれており、以下のようなステップで説明が行われている。

 

ステップ0:啓蒙活動の実施

ステップ1:社外に求める技術の選定(Want)

ステップ2:技術の探索(Find)

ステップ3:技術の評価(Get)

ステップ4:技術の取り込み(Manage)

 

「自社には8600人の研究者がいるが、世界には先端技術の研究者が150万人いる。じしゃのみでは解決できない課題に関しても、世界中を探せば、誰かが解決策を持っている筈だ。それを使えば研究開発は加速する」(P&G)。

 

 国内外の事例も多く紹介されている。フィリップスのノンフライヤー。P&G。東レ。味の素。大阪ガス。デンソー。医療業界。帝人。ハタ研削。JAC。香川大学。技術募集とその応募からオープン・イノベーションが生まれた例も載っている。

 

 加えて、オープン・イノベーションの応用として、以下の5つの可能性についても言及されている。

  • マーケティングを兼ねた技術募集(大金を賞金にして話題作りや社会的なアピールも行う)
  • 途上国向けにシンプルな技術を活用
  • 技術ではなくアイディアを募集
  • イノベーション・コンテストの実施
  • 専門家の募集

 

 日本のモノづくりに対する著者の熱い想いとともに、日本にはオープン・イノベーションに必要な高い技術力を持った企業が多いことが、各所で力説されている。

 

単行本、280ページ、ダイヤモンド社、2015/2/27

オープン・イノベーションの教科書――社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ

オープン・イノベーションの教科書――社外の技術でビジネスをつくる実践ステップ

  • 作者: 星野達也
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)