密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

〝社風〟の正体 (日経プレミアシリーズ)

著:植村 修一

 

 タイトルと「はじめに」を立ち読みして、面白そうな本だと思って買った。製品やサービスに比べると「社風」や「企業文化」は、わかりにくいし、見えにくいが、著者によれば、どの会社でも「社風」や「文化」はあるという。

 

「不祥事につながる文化もあれば、イノベーションや成長につながる文化もあります」。

 

 アイディアはとてもよい本である。また、著者の考えたことだけでなく、著者が今まで読んできたいろいろなビジネス本からの引用や考え方の紹介があり、そこはコンパクトにまとまっている。

 

 例えば、キム・キャメロンとロバート・クインは、企業文化を以下の4つに分類しているという紹介がある。

1.家族文化

2.イノベーション文化

3.マーケット文化

4.官僚文化

 

 ビジョナリーカンパニーになるには「基本理念を維持しながら進歩を促す」。クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」では、「偉大な企業はすべてを正しく行うがゆえに失敗する」とされる。企業経営にとって、国民性は、マネジメントのスタイルとマーケティングにおいて問題になる。企業文化と国民性を関連付けた「ホフステッド指数」。日本企業のM&Aの失敗の問題点は、事前の把握不十分による高値掴みと、統合後のプロセスをお任せでやってしまうところにある。マックス・ベイザーマンによる「倫理の死角」。オープン・イノベーション。大学の閉鎖性。日米の金融機関の文化と状況の変化については、著者が日銀時代に知ったことについても書かれてある。

 

 テーマは良い。また、スポットでは、参考になることはいくつかあった。ただ、読み終えた感想を正直に書くと、全体的には、もうひとつ散発的な内容であるように思った。また、このテーマは、大きいだけでなく、外からは見えにくいものを含んだテーマなので、時間をかけて地道に取材を重ねて得た生々しい材料も織り込むとかしないと、このアプローチだけではなかなか踏み込んだものにはなりにくい気もした。事前の期待には及ばない本だった。

 

新書、256ページ、日本経済新聞出版社、2018/5/11