密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

エコカー技術の最前線 どこまでも進化する燃費改善と排出ガスのクリーン化に迫る

著:高根 英幸

 

いわゆる「エコカー」と呼ばれる自動車の技術の概要をざっと紹介した本。それほど細密に解説されたものではないが、オールカラーで、各社のユニット部分の写真やモデルカーの写真や原理図といった資料が多く掲載されているのが特徴である。以下のタイプのクルマの技術が紹介されている。

・ハイブリッド車(HV):ガソリンエンジンにモーターを追加し、走行状況に応じてエンジン、モーター、あるいは両方を利用するもの。
・プラグインハイブリッド(PHV):外部からの充電でモーターだけで走行できる範囲を広げたもので、ハイブリッド車より大きなバッテリーを持つ。
・電気自動車(EV):バッテリーに充電した電気のみで走行する。
・レンジエクステンター:電気自動車の一種。発電用の小さなエンジンを搭載したもので、エンジンは充電用として利用し、走りながら充電する。
・クリーンディーゼル:ガソリン車よりも熱効率の良いディーゼル車の特性を生かし、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM: Particulate Matter)の排出を大幅に削減したもの。
・燃料電池車(FCV):水素と酸素の化学反応から電力を得てモーターを稼働させることで走行する。
・ダウンサイジングターボ:直噴エンジンにターボ技術を組み合わせたエンジンで、高負荷時だけ過給してエンジンの排気量を小さくできる。

ほかにも、直噴(筒内直接噴射)エンジンスカイアクティブ、既存のガソリン車における燃費向上技術、変速機の3種の違い(CVT: Continuously Variable Transmission, AT: Automatic Transmission , DCT: Dual Clutch Transmission)、バイオディーゼルなどの説明がある。また、HVやEVに関してはモーターやバッテリーや充電についての解説もある。

 しかし、自動車の技術というのはずいぶん多様化していると改めて思った。この本はエコカーという視点からのものだが、これに自動運転技術やConnected Carの技術が加わる。

 自動車の宿命上、安全は絶対命題だから、そこを守りながら様々な技術を研究し、ライバルに負けないようにして、しかし標準化も重視しながら、進化してゆく必要がある。自動車はわが国の輸出を支える極めて重要な産業であり、同時に、機械工学・材料工学・電子工学・ITと様々な産業分野の英知が集約する分野でもある。

 このようなクルマの技術革新の動きを、エコカーという視点から理解する上で、一般向けとしてよくまとまっている本である。

 

新書、192ページ、SBクリエイティブ、2017/1/17

エコカー技術の最前線 どこまでも進化する燃費改善と排出ガスのクリーン化に迫る (サイエンス・アイ新書)

エコカー技術の最前線 どこまでも進化する燃費改善と排出ガスのクリーン化に迫る (サイエンス・アイ新書)

  • 作者: 高根英幸
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2017/01/17
  • メディア: 新書