日本はキャッシュレス後進国と言われる。硬貨・紙幣流通残高の対名目GDP比は日本は群を抜いて高い。一方、民間最終支出に対するキャッシュレス決済比率は群を抜いて低い。また、訪日外国人の不満の3番目にペイメント関連がくる。政府は2020年の東京五輪までにキャッシュレス比率を大幅に高めることを目標として掲げている。
キャッシュレスについて解説した本。ムック本サイズ。ひと口にキャッシュレスといっても、クレジットカード、電子マネー、モバイルP2P、QRコード決済、モバイルPOS、デビットカード、モバイルNFC決済といった新旧さまざまな方法がある。
キャッシュレス化のメリットについては、以下のようなことが挙げられている。
- 紙幣・硬貨の製造及びメンテナンスコストが不要
- 現金輸送や保管コストの低減
- 偽造対策の手間とコストの解消
- 取引の迅速化・効率化
- ATMの投資・管理コスト軽減
- レジ待ちの効率化といったカスタマーエクスペリエンスの向上
- 与信供与の迅速化
- IT産業の発展
- 生産性の向上
その一方、キャッシュレス化は現金より大きな被害を生みやすい。1968年の3億円強奪事件のような現金で大金を奪う事件は自動車の利用をはじめとした物理的な制約を突破しなければならないが、キャッシュレスの世界ではパスワードひとつで大金を奪取できる可能性が残る。コインチェック事件などが、まさによい例だ。
中盤以降は、キャッシュレスに関する様々なサービス、POSレジなどの活用、事例、ブロックチェーンと決済についての説明がある。業者の宣伝半分のようなページも少なくない。
また、これは本書に限らず、キャッシュレスに前のめりになっている昨今のわが国の業界関係者への不安ではあるが、そもそも天災によって電気が止まってしまったり通信網が切れた場合はどうなるのか?災害の多いわが国の事情に基づくリスク検証も、もっと行うべきである。
ムック、112ページ、日本経済新聞出版社