著・演奏:仲道 郁代
「せき込むような短調の旋律が、中間部で一瞬のうちにやわらかい長調に転調する、ショパンならではの匠の技です」。
「たった一音のちょっとした変化でふわっと色彩を変えてしまう。こんなところにもショパンの美意識を感じます。1拍に入る音符の数が右手と左手でちがうのも、ショパンお得意の技です」。
ピアノの詩人といわれるフレデリック・ショパンの人生と作品について解説した本。オールカラー。著者は美人ピアニストの仲道郁代。著者自身の演奏による70分超のCDが付いている。
第1部の楽曲解説は13曲。楽譜が引用されポイントが色づけされていので、とてもわかりやすい。作曲の背景やその頃のショパンの境遇についても書かれてある。
また、それぞれの曲について「ピアニストの謎解きエッセイ」というコーナーがさらにあり、冒頭で引用した部分とか、非和声音の効果的な利用といった、演奏家ならではの視点が披露されている。
加えて、ソナタ第3番作品58ロ短調は4楽章だけなのが残念ではあるものの、解説で取り上げられている作品については全てCDに演奏が収められているので耳でも確認できる。
これらによって、複合的な視点からこの類まれな天才が残した作品への理解を深められるように構成されている。それ以外の作品についても簡単な概要説明がある。
写真や絵が豊富なのも特徴である。エラールとプレイエルという2種類のピアノは写真付きで比較がされているし、当時のピアノの80鍵の音域をいっぱいに使って書かれたという「舟歌」の解説では低音部と高音部を異なるペダルで操作できるというプレイエルの特徴が実際のダンパーの写真で確認できる。
第2部は、ショパンの人生について。紹介されている内容自体は普通だが、ここでも絵と写真がたくさん掲載されているのが嬉しい。冒頭には人物関連表や略年表と用語集があるし、巻末にはショパンゆかりの地がWebサイトのURL付きで紹介されている。なかなかよく考えて企画されている本だ。
単行本、160ページ、ナツメ社、2010/2/17
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