著:小林 頼子
本書の冒頭でも触れられているように、フェルメールは今や日本でもっとも人気のある西洋画家の一人になっている。本書では、真作として32作品を、すべて見開きで見右ページに作品のカラー印刷、左ページに簡単な解説文という形で紹介してある。『真珠の首飾り』など何作かは、さらに中央や各部のアップの写真も掲載されている。
真筆性について意見が分かれる作品4作はまとめて見開きで紹介されている。『ヴァージナルの前の女』は真作とされて2004年に日本円にして33億円で落札されているが、著者は、より具体的な根拠の説明は無いものの、「様式的な細部で納得のいかない点があり」として、この4作品の中に含められている。
後半では、フェルメール作品で繰り返し登場するモチーフの比較、同じく当時の人々の生活を描き互いに影響を及ぼしあったと思われる他の画家の作品との比較を行い、「フェルメールは集中する女性がお好み」などの指摘を行っている。
印刷は良い。29.8 x 21.2 x 1.2 cmと大きさもそこそこある。もっとも解説はそれほど詳しいわけではない。著者は、その辺は「本書の姉妹編『もっと知りたいフェルメール 生涯と作品 改訂版』をぜひとも併せて参照して欲しい」と書いている。ただ、これはどうだろうか。フェルメールは作品数が少なく、結果として画集はどれも同じく全作品を紹介するのが通例である。なので、フェルメールに関心があれば作品集としては1冊あればとりあえず済んでしまう。この本自体3000円以上するうえに、結局同じ作品が掲載されているやはり2000円ほどする別の本も買わないといけないとするのは、ビジネスなので仕方ないだろうが、個人的にはどうも釈然としない。
大型本、151ページ、東京美術、2018/12/7
- 価格: 3080 円
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