密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

AV男優の流儀

著:鈴木 おさむ


 森林原人、しみけん、島袋浩、カンパニー松尾、安達かおる。5人のAV男優・監督とのインタビューを収録した本です。同窓会に出席すると「上野動物園のパンダを見るような感じで『(AV男優って)どうなの?』って聞かれる」と語っている人がいますが、そういう好奇心をある程度満たしてくれる内容になっています。

 AV女優は今やなり手がたくさんいる凄い時代になりましたが、男優の方の数は限られていて70人ほどだそうです。理由は、女の子は顔とスタイルが良ければOKですが、AV男優に求められるものは違うので、一人前になるにはそれなりに時間がかかるし、特に上手く見せることができないとAV男優にはなれないそうです。

 こなしている数もすごいし、特殊要求に応えたり、きわもの的な話もありますし、驚くようなエピソードもいろいろ披露されています。また、最近は世の中の高齢化にあわせたニーズもあるようで、65歳以上の女性のお相手をするときのコツなども語られています。日本には男優犬が2匹いたとか、不思議すぎです。

 また、やはり商売ですから、特に監督というのは売れる作品を生み出すことへのプレッシャーがあるようです。その一方で、松尾氏の「本来AVって幅が広くて、自由だと思ってるんです。女性を裸にしてセッXスさえしていれば何やってもいいんですよ」という発言には、ある種のさとりのようなものを感じますし、安達氏の「企画を考えるときに、みんなが見たくないものって何か?という発想をするといろんなものが出てくる」というのは、AVだからというのはあるものの、一種の逆転の発想ではないかと思います。

 それにしても、これだけいろいろな話を引き出せるのは、やはりインタビューする人の力も大きいと思います。質問は的確ですし、ユーモアもあり、しかもエロです。そして、一緒に盛り上がりながらも、AVという仕事に賭ける5人のプロフェッショナルとしての側面にもきちんと焦点を当て、読者に真面目に問いかけてきます。なかなかよくできた対談集だと思います。

 

新書、215ページ、扶桑社、2014/12/23

 

AV男優の流儀 (扶桑社新書)

AV男優の流儀 (扶桑社新書)