密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

赤めだか

著:立川 談春

 

 落語家の立川談春が、立川談志に弟子入りして真打ちになるまでの時代を自ら書いた連載を一冊にまとめた本。これは再発売となる文庫版についてのレビューだが、単行本として出版された2008年には講談社エッセイ賞を受賞したという。

 ところどころ笑わせ、ほろっとさせる。少年時代は競艇選手になりたかったのに身長が規定より2㎝高くてかなわなかったらしい。高校を中退して談志師匠に弟子入りを決めたいきさつがまた凄い。当時の談志とのやりとりや他の弟子たちと右往左往した様子は、かなり生き生きと描かれていて、思わず引き込まれる。

 築地魚河岸修行。師匠とのハワイ旅行。志らくと二人で呼ばれて、高田文夫、米助、小遊三の3人に貸し切りのスナックのママと女の子たちを爆笑の渦に巻き込んだ思い出。門下4人同時の二つ目昇進試験の冷や汗のエピソードと有楽町マリオンを満席にした二つ目昇進披露落語会。特に、立川流後輩たちに告ぐ、という章に投影されている著者の落語に対する真摯な厳しさ。小さんと米朝という2人にそれぞれ稽古をつけてもらった話。自分の真打ちを賭ける場を特別なものにしたうえに、よりによってそこに談志を破門にした小さん師匠を絡めたこと、そして談志と小さんのそれぞれの反応についても書かれている。

 文章はよく練られているうえに、噺家だけあって言葉の使い方もうまい。大変面白く読めた。

 

文庫、306ページ、扶桑社、2015/11/20

 

赤めだか (扶桑社文庫)

赤めだか (扶桑社文庫)

  • 作者: 立川談春
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 文庫