著:インデックス編集部
家紋は、一言でいうなら、貴族で生まれ、武家に広まり、江戸時代には条件付きで庶民にも認められるようになったことから一気に多様化した、という歴史を持つ。
日本全国の代表的な家紋とその家紋に関する家柄や武将や貴族に関する簡単なエピソード、多彩な家紋を分類して紹介した本である。
家紋は平安時代に装束や調度品につけた文様が元になっている。誰のものかわかるように車紋として牛車にも描かれ、これが家紋になったという。武士の時代になって戦闘が様々な所属によって組織された集団同士による大規模なものになってゆくと、識別の必要が高まり、家紋は家柄を示すシンボルになった。
江戸時代には家紋は庶民に広がる。天皇家を表す菊紋、徳川家を表す葵紋、大名や旗本と同じ紋は使えないという制約はあったが、その制約の元で紋上絵師たちによって工夫を凝らした様々な紋が作られ、多様性が広がった。商売でも使われた。三菱のスリーダイヤなどは現代にも受け継がれてロゴとして定着している。
ヨーロッパでも王侯貴族は紋章を持ったが、日本は一般庶民が家紋を持つということが広く行われた点で独自性があるようだ。
本書では、様々な家紋が紹介されている。花紋、植物紋、動物紋、天然紋、器物紋、文様・図案。家紋は全部で約20,000種類以上あるというから、その一部でしか過ぎないが、日本の伝統的なデザインセンスを強く感じる。
新書、256ページ、イースト・プレス、2018/7/8