著:芹澤 健介
日本にいる在留外国人は2017年6月現在で247万人で、総人口の1.9%を占めている。在日朝鮮・韓国人は減っているが、全体的には増加傾向にある。外国人労働者という分類では128万人で、この10年で2.6倍に増えた。技能実習の名目で工場や農家で働く外国人もいれば、介護施設、居酒屋など、今や様々な職種を外国人労働者が支えている。
中国人も増えているが、ベトナム人とネパール人は3年で倍増している。ベトナムでは日本語ブームに沸いている。日本への好意的なあこがれもあるが、やはりおカネのため、という意見も出てくる。ネパールも内戦と政治の不安定で外国に行く人が増えており、沖縄をはじめ日本に来る人が増えている。ミャンマーから来日する人も増えている。
また、27万人いる留学生のうち26万人がなんらかのアルバイトをしている。コンビニで働く外国人も4万人になっているという。
著者は、特にコンビニで働いているもしくは働いた経験のある外国人を中心に取材を重ね、そこから見えてくる日本の外国人労働者の実態や留学生についてレポートしている。コンビニは我々にとって身近かでイメージしやすい上、留学生にとっても対人業務なので日本語の勉強になるというようなメリットがあって、特に来日してまだ日が浅く日本語もそれほどうまくない外国人には手ごろな仕事のようだ。逆に、日本語がうまくなると、他の仕事へ移る人が少なくないという。
コンビニで働く留学生のうち大学生や大学院生は少なく、ほとんどが日本語学校の生徒たちである。留学生の1週間の労働時間は法律によって最大28時間に制限されている。これは国際的には緩い基準のようだが、労働時間x時給で考えるとそれほど多い収入にはならない。しかも、大半の外国人が来日する際に借金してエージェントに多額のお金を払っているので、その返済もある。
よって彼らは、例えば新大久保のアパートに3人や4人、中には8人で同居して家賃を工面して働き、日本語学校にも授業料を収める。
コンビニの店長は親切な人が多いようで、労働力不足ということもあり、売れ残って廃棄する食品を融通したり、「辞めないでくれ」と時給を上げたり特別にお金を渡してくれる人もいるようだ。ローソンは返済不要の奨学金制度も設けている。また、コンビニ業界は技能実習の対象職種にも加わることになった。
一方、日本での生活に疲弊した外国人も少なくない。アルバイトと勉強の掛け持ちで4時間しか寝ていないという毎日を過ごす人もいる。また、外国人留学生の64%が卒業後に日本での就職を希望するのに対して、日本で就職できる学生は30%しかいない。
以前より改善されたとはいえ外国人技能実習も改善すべき点はまだまだありそうだが、目を引いたのは、全国で600校以上あるという日本語学校のひどさである。中には良心的に経営をしているところもあるが、高い授業料をとって多くの学生をひとつの教室に押し込み、講師にもコンビニの時給と大差ないような給料で授業を丸投げするというようなところも珍しくはないようだ。不祥事も後をたたない。設立時の国の審査は緩く、時々入管による審査がある以外は野放し状態。さすがにまずいということになり、2017年7月から法務省の対応もきびしくなり始めたが、まだ堵に就いたばかり。
外国人の起業には多くのハードルがあるが、一部の戦略特区では「スタートアップビザ」制度が始まった。一部で、起業に成功して店舗網を拡大している外国人もいる。その一方、闇に流れてしまう外国人も少なくない。留学生が資格外活動として従事することが禁止されている風俗業に流れている人もいる。
日本の人口は減り続けている。今後は減少のカーブがさらに急になってゆく。深刻化する労働力不足を補う手段として、外国人労働者は不可欠の存在になりつつある。各地で共生の試みもはじまっている。
ちなみに、OECD加盟国の中では日本は第5位の移民大国になっているが、移民をほとんど認めない方針は変わっておらず、外国人が住んで働いてもらって労働力不足を補ってくれるのは歓迎という方針であるという。
かつて、外国人労働者を受け入れるべきかどうかという議論が活発で、今でもそのような議論はひんぱんに行われているが、実態がここまで進むと、もう受け入れの可否を議論するような時期はとっくに過ぎてしまっており、受け入れありきでどうするかを議論すべき時期になっているのだな、と実感した。
新書、224ページ、新潮社、2018/5/16