著:ジャレド・ダイアモンド、ユヴァル・ノア・ハラリ、リンダ・グラットン、ダニエル・コーエン、ニック・ボストロム、ウィリアム・J・ペリー、ネル・アーヴィン・ペインター、ジョーン・C・ウィリアムズ、インタビュー:大野 和基
世界的な知の巨人8人にインタビューした内容を収めた本。テーマとしては、資源と格差、人工知能による労働や社会への影響、人生100年時代の生き方、テクノロジーは中流階級を豊かにしない、北朝鮮と核開発、トランプ大統領を支持するアメリカのホワイト・ワーキング・クラスといったことが論じられている。
「われわれが今問われていることは、『持続可能な経済をつくれるか』『世界中の生活水準が一定のレベルで平等を達成できるか』ということだと思います」(ジャレド・ダイアモンド)。
「全世界で戦争と犯罪による一年間の死者数は60~70万人です。ところが、交通事故の死者数は130万人。肥満とそれに関連する疾患による死者数は300万人です」(ユヴァル・ノア・ハラリ)。
「『教育・仕事・引退』という3ステージの人生設計はもはや時代遅れになりつつあります」(リンダ・グラットン)。
「AIの未来を作るときに、スーパーインテリジェンスの好みがわれわれの好みと確実に一致するように設計した方がいいのです」(ニック・ボストロム)。
「一生懸命働けば、お金が儲かると信じること自体が未熟な考え方なのです。世界はそのように機能していません」(ダニエル・コーエン)。
「核兵器を使えば、一日で北朝鮮を破壊できるでしょう。しかし、アメリカは東京やソウルに北朝鮮の核ミサイルが撃たれるのを防ぐことはできません。ですから、それをやるべきではありません」(ウィリアム・J・ペリー)
ボストロムは、AIが成熟すると人間とは何かということが問われる、と社会や労働のあり方への影響を述べている。グラットンは、人生100年時代は貯蓄のような有形資産よりもいつまでも元気で働けるという無形資産の方が重要になるとしている。コーエンはテクノロジーの進歩による恩恵は階層や人によって異なり、それが新たな格差を生むとしている。
日本についてもいくつか質疑が行われている。ダイアモンドは、日本のように資源を海外に頼っている国の人口が減少することは長期的にはよいことだとする。コーエンは高齢化の進む日本がロボット導入において先進的な国になれる可能性を指摘している。
それほど身構えずにあっさり読める本であるし、未来のことは当たるも八卦当たらぬも八卦という感じで本当にそうだろうかと思うところもあるが、含蓄の深い発言も見られ、一読の価値のある本である。
新書、272ページ、PHP研究所、2018/6/19
- 作者: ジャレド・ダイアモンド,ユヴァル・ノア・ハラリ,リンダ・グラットン,ダニエル・コーエン,ニック・ボストロム,ウィリアム・J・ペリー,ネル・アーヴィン・ペインター,ジョーン・C・ウィリアムズ,大野和基
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2018/06/19
- メディア: 新書
- この商品を含むブログを見る