密林の図書室

日々読んでいる本の備忘録を兼ねた書評と内容の概要紹介のブックレビューのブログです。人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものと考え、このブログを立ち上げました。過去に別名でAmazonのレビュー欄に掲載したものとそちらには未掲載のものがあり、後者は「Amazonレビュー欄未掲載」タグをつけてあります。

武器としての人口減社会 国際比較統計でわかる日本の強さ

著: 村上 由美子

 

 最近、人工知能(AI)やロボットの発展によって、将来、現在人間がやっている仕事がたくさん奪われるという説が広まっている。また、情報通信技術(ICT)の活用による生産性の向上によっても職が減る事態が懸念されている。しかし、著者は、このようなイノベーションの進展によって少ない労働力で済む社会になってゆくことは、人口減少社会を迎えて労働力人口が減り続けることになる日本にとっては、好都合なことだと説いている。

 また、日本には埋もれている人材が多い、と著者は指摘する。OECDの調査によると、日本の16-65歳の読解力と数的思考力は世界でトップであり、中高年のスキルは高いから、企業に囲われている人材の流動化を促すことによって社会を活性化する余地がある。なんだかんだと子供の学力も世界的には高い。女性の社会進出も、以前より進んできたとはいえ、欧米に比べるとまだまだ女性が活躍する余地が残されている。ニートについても、海外ではニートは低学歴の人が多いのだが、日本のニートは高学歴の人の方が多いという特徴があり、海外のニートに比べてポテンシャルがある。そもそも日本は、人々が勤勉でモラル意識も全体的に高い。先述したように、技術の進歩によって少ない労働人口でもまかなえる社会になる可能性が高いのだから、あとはこのような人々を効果的に活かす仕組みを整えてゆけばいい、という主張である。

 著者は、OECD東京センター長。OECDの資料を数多く引用して日本の強みと弱みを各所で説明している。OECDのデータは国際比較でよく用いられているが、新書のサイズにこれだけ次々いろいろ掲載されているのは目をひく。それらを著者の解説とともに読み解いていくだけでも一読の価値があると思われる。また、海外で目覚ましいキャリアを積んだ女性ならではの視点や経験に基づくエピソードも多く盛り込まれている。実際、5章構成のうち「女性は社会の”Best Kept Secret”」という3章のページ数が一番多い。

 日本の生産性の低さについては、日本では、イノベーションが生まれないのではなく、生まれたイノベーションが拡散するメカニズムがうまく機能していないために、その恩恵が経済全体に行きわたらず、生産性の向上につながっていないのではないかという説を唱えている。

 

目次

第1章 人口減少が武器になるとき
第2章 眠れる「人財」大国・日本
第3章 女性は日本社会の“Best Kept Secret”
第4章 働き方革命のススメ
第5章 日本のイノベーション力を活かせ!

 

新書、203ページ、光文社 、2016/8/17

 

武器としての人口減社会 国際比較統計でわかる日本の強さ (光文社新書)

武器としての人口減社会 国際比較統計でわかる日本の強さ (光文社新書)

  • 作者: 村上由美子
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/08/17
  • メディア: 新書