密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

生物と無生物のあいだ

著:福岡 伸一

 

「むしろ直感は研究の現場では負に作用する」

「秩序は守るために絶え間なく壊されなければならない」

「界面は、二つの異なるものが出会い、相互作用を起こす場所である」

 
 面白かった。ただ、本書をより深く理解するには、ある程度の科学的な基礎知識は必要だと思う。本書で、生命の営みの不思議への関心に目覚めた方は、本書の著者の福岡氏が大推薦している「見てわかるDNAのしくみ」に付いているDVDをおすすめしたい。生命の営みの精緻さが、さらにリアルに理解できるように思う。また、オールカラーでわかりやすい「生物図録」あたりもお勧めである。

 「ポスドクは、研究室の奴隷(ラブ・スレイブ lab slave)、これが私達の乾いたジョークだった」。厳しい研究競争の実態や舞台裏、最先端の研究者達の生の姿も描かれている。さらに、付け加えるなら、個人的には、シュレディンガーの「生命とは何か」から引き出している優れた視点の解説が大変見事で、とても印象的だった。

 それにしても、世間の理科離れを象徴するように、理科関連の著作はレビュー数が比較的少ないのが相場なのだが、本書はなぜか凄く売れている。この本は確かに良書ではあるが、他にもいろいろ良い理科関連の本がある中で、必ずしも易しいというわけではない本書がどうしてこんなに売れたのか、ちょっと興味をそそられた。

 

目次

第1章 ヨークアベニュー、66丁目、ニューヨーク
第2章 アンサング・ヒーロー
第3章 フォー・レター・ワード
第4章 シャルガフのパズル
第5章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ
第6章 ダークサイド・オブ・DNA
第7章 チャンスは、準備された心に降り立つ
第8章 原子が秩序を生み出すとき
第9章 動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)とは何か
第10章 タンパク質のかすかな口づけ
第11章 内部の内部は外部である
第12章 細胞膜のダイナミズム

 

新書、286ページ、講談社、2007/5/18

 

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)