著:前野ウルド浩太郎
よく売れているようなので、読んでみた。子供のころにファーブルにあこがれ、昆虫研究者を目指し、バッタが大発生すると農作物が壊滅的な被害を受けるモーリタニアへ渡った研究者の記録である。あくまでも新書なのでそれほど鮮明なものではないが、さりげなくカラー印刷の写真が多く入っている。
著者のユーモア感覚と、日本では想像できないような異郷での数々のハプニングの面白さで、ぐいぐい引き込まれる。サソリに刺されたり、バッタの研究者なのに体がバッタアレルギーになってしまったり、まさにサバイバルである。ウルドの名をくれた異国のバッタ研究所の所長と、片腕となって働いてくれたティジャニのこと。ペットになった2匹のハリネズミはかわいい。身分がはっきりしないポスドクからの這い上がりぶりから、立場が不安定な若手研究者の苦悩もにじみ出ている。また、無収入になりかけたところで雑誌の連載をもらって有名になったり、研究者として次第に階段を上がってゆく様子もみられる。
残念なのは、肝心のバッタの研究成果についてはあまり書かれていないことで、それについては論文が追い付いていなので、後日別な本でまとめて紹介するということだ。
新書、378ページ、光文社、2017/5/17