著:亀井 卓也
スマホの通信環境を大きく改善した今までの4Gに代わって、5G通信がいよいよ登場する。本書は、5Gは今までと何が違うのか、どういう可能性があるのかを、一般向けに説明した新書である。
5Gが浸透した社会の例をまず簡単に説明した後、5Gの技術的な特徴として以下のようなことが挙げられている。
(1)大容量高速通信
- 今まで移動体通信での活用が難しかった「サブロク帯」と呼ばれる高い周波数帯の活用(3,7GHz帯, 4.5GHz帯, 28GHz帯)
- 基地局のアンテナを集積するMassive-MIMOや、ビームフォーミング
(2)超信頼・低遅延通信
- 4Gの10分の1にあたる1ミリ秒の遅延
- C/U分離(C:コントロールプレーン、U:ユーザプレーン)
(3)多数同時接続
- ひとつの基地局に1万台程度の端末がアクセスしても輻輳しない
5Gは単に消費者の端末通信需要を満たすという用途以外の、幅広い用途での応用が見込まれている。例えば、IoT(Internet Of Things)。さらに、双方向でインタラクティブな大容量通信による娯楽の広がり。クルマ、健康、工場と集められたあらゆるデータのAIでの分析や活用も促進されることが期待される。そして、MaaS(Mobility As a Service)、エネルギー管理、認証、デジタルサイネージ、より利便性の高い決済、介護や医療、VRやAR、スマートシティ。日本政府が提唱している「Society 5.0」の実現のカギも握る。
5Gはネットワークを使った様々なビジネスの可能性を広げるため、近年のトレンドであるクラウドやサブスクリプションモデルとの相性も良いと考えられる。
全編を通じて、5Gは技術そのものだけでなく、それをビジネスにどう応用するかで社会を大きく変える力になりうることが力説されている。そのためには、ゼロサムゲームではなく、エコシステムで考えることがポイントになる。
新書サイズなのでそれほど詳しくはないが、5Gはどういう特徴があり、どうして期待されているのかが、それほど知識がない人でもざっと理解しやすくなっている。
新書、256ページ、日本経済新聞出版社、2019/6/15