著:永木和載、監修:大平雄一
日本人の8割が一生のうちに一度は腰痛を経験するという。また、腰痛の85%が原因不明だという。腰痛についての本。
医師が腰痛患者に実施する検査は、問診、画像検査、神経検査の3つ。原因がわからない「非特異的腰痛症」とされる85%については、命にかかわる危険性の高い腰痛ではないことがほとんどであるため医師も深入りしない。また、この非特異的腰痛症の80%以上は6週間以内に自然治癒する。その一方、腰痛の80%は再発する。腰痛は遺伝もあるが、環境の方が要因的には大きい。
背骨のゆがみは腰痛とは必ずしも関係ない。痛みの無い人でも画像検査をすると異常が見つかることが多くあるので、画像検査で何か異常が見つかったからといってそれが痛みの原因ではないこともある。MRIはX線よりも詳細な診断が可能だが、検査料が高く、人体に金属がある場合には実施できない。また、いずれにせよ、画像診断では痛みはわからない。
原因が特定される特異的腰痛症のうち、多いのは腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、脊椎圧迫骨折。感染性脊椎炎やがんの脊椎転移、内臓疾患などがあり、これらは医師が識別する。一方、原因がわからない非特異的腰痛症については、医学療法士が、患者の痛みについての訴えを問診で確認して可能性を洗い出してゆく。
ぎっくり腰になったら安静状態は最小限にとどめ、筋肉のコンディショニングを行った方がいい。前屈で痛みが出る場合は、椎間板症や椎間板ヘルニアの可能性が高い。重い荷物を持たなければならない仕事をする人を除き、筋力トレーニングが腰痛改善に役立つかは疑問。筋肉が柔らかいと関節が変形しやすく、このため女性の方が関節変形が起こりやすい。鍛えるなら、腹筋より背筋を鍛える。
姿勢の問題は大きく、姿勢の矯正は重要。正しい姿勢というより、負荷が分散されるようにする。活動的にすると早く治癒する傾向がある。ただし、つぶれた骨は元には戻らない。また、骨がつぶれても腰痛は治癒することがある。
マッサージは腰痛改善には向かないし、効いたとしても一時的。電気刺激を利用した痛みの緩和も一時的。牽引法は一部の腰痛症に効果的。長期間のコルセット着用は筋力低下を招く。鍼灸治療は自律神経の調整であって腰痛の根本治療にはならない。注射は局所麻酔薬、神経は解約、抗炎症薬が使われる。薬物投与は、抗炎症剤、筋弛緩薬、抗不安薬などが使われる。
見開きで右ページが解説、左ページが図解。文章が少々わかりにくいところがあるが、まじめに書かれている。
単行本、248ページ、秀和システム、2018/6/7