密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

がんを宣告されたら。対処の基本は、不安と痛みの正体を、可視化すること。『がんを生きぬくお金と仕事の相談室』

著:辻本由香

 

 一生の間に2人に1人ががんになる時代である。がんになったからといって、早期発見であれば、必ずしも死ぬとは限らない時代でもある。

 しかし、がんになると様々な不安や心身の苦しみに囲まれる。医学的なことは医者と相談しながら進めることになるが、それだけでなはなく、金銭的な問題も含め、患者はいろいろな不安と向き合うことになる。では、それらの問題に対してどうすればいいのか。そこに焦点を当てた本である。

 著者は、父親をがんで亡くし、自身も43歳で乳がんになった経験を持つ。そこから、「がんと向き合うフィナンシャルプランナー」として活動をしているそうだ。特に、お金や仕事との関係について具体的に書かれている。

 

著者によると、がんの苦痛はひとつではなく、全体的には以下の4つに分類されるという。

 

1.身体の痛み

2.精神的な痛み・心のつらさ

3.スピリチャルな痛み(人生の後悔/残された時間の過ごし方/生きる意味/価値観/家族への負担)

4.社会的な痛み・お金や仕事の苦痛

 

 

 医者との付き合い方など、いろいろなことが書かれているが、ポイントは、「不安と痛みの正体を可視化する」ことになる。

 特に、お金については、数字を伴って考えられることでもあり、どこにどういうふうにお金がかかるのか、どういう点に気をつけなければならないのかはきちんと調べて書き並べていけば見える化しやすい。

 例えば、手術が終わってからもかなりのお金がかかる、手術後の治療や、再発しないか何年も検査が続くという点は、いわれてみればそうだな、と思った。また、がんになって仕事を辞める人も少なくないようだが、治療費を払い続けるためにも仕事は必要で、疾病手当金など利用できる制度はきちんと調べて利用した方がよい、ということが具体的にいろいろ書かれている。

 

 がんの告知を受けてから自殺する人、特に1か月以内に自殺する人が多い、ということもこの本で初めて知った。告知は当たり前の時代だが、やはり心の整理も重要になる。心の痛みについての対処も書かれており、基本は以下の5つの点だという。

 

1.がんになった自分を不幸だと思わないこと

2.こころもカラダもしんどいときは、無理しないこと

3.頼れる誰かを見つけること

4.心無い言葉は受け取らないこと

5.生きるための欲をもつこと

 

 特に前提条件なしにあっさり読める。インターネットの情報は玉石混交なので信頼性の高いサイトを見るようにする、サプリメントを高額で売りつける人たちが寄ってくることもあるので注意する、というようなことも書かれている。

 

単行本、200ページ、河出書房新社、2019/2/22

がんを生きぬくお金と仕事の相談室

がんを生きぬくお金と仕事の相談室

  • 作者: 辻本由香
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2019/02/22
  • メディア: 単行本