密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

見えない巨大水脈 地下水の科学―使えばすぐには戻らない「意外な希少資源」 (ブルーバックス)

著:日本地下水学会、井田 徹治

 

「現在のような地下水の浪費を続けていけば、やがて世界の穀物生産は減少し、深刻な食糧危機を招くことになる。すでにその兆しは各地で表面化しつつある」(レスター・ブラウン博士)



 本書を読むと、上記の指摘はオーバーではないことがわかる。日本では河川の水もよく利用されているが、世界的に見るとむしろ人類は地下水に支えられているといえる。したがって、地下水に頼って生産された食糧を多く輸入している日本も実は同じ危機を共有していることになるそうだ。

 本書は、地下水について、その定義、価値、溜まる仕組み、寿命、味の秘密、名水百選、軟水と硬水、帯水層、湧水、地下水レンズ、地下のダム、様々な地下水の利用法、地下水の調査法と測定法、井戸の掘り方の種類、地下水がどこにあるか調査する方法、地盤沈下、地下水汚染の実態と対策、温暖化との関係といった様々な角度から解説を行っている。

 中にはブルーバックスらしい科学的な解説もあるが、全体的には平均的な新書レベルの説明の方が多い。様々な地下水についてのネタをどのようにまとめるか著者はいろいろ思案したようだが、結果として理系文系関係なく興味深く読める一冊になっているように思う。

 科学物質で汚染された水を細菌によって浄化する「バイオメディエーション」の話も印象的だった。

 

新書、272ページ、講談社、2009/5/21

 

見えない巨大水脈 地下水の科学―使えばすぐには戻らない「意外な希少資源」 (ブルーバックス)

見えない巨大水脈 地下水の科学―使えばすぐには戻らない「意外な希少資源」 (ブルーバックス)

  • 作者: 日本地下水学会,井田徹治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/05/21
  • メディア: 新書
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