密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

サービスイノベーションの海外展開

著:伊丹 敬之、著:高橋 克徳、著:西野 和美、著:藤原 雅俊、著:岸本 太一

 

 自動車、鉄鋼、電子部品といったモノの輸出ではなく、サービス分野の日本企業の海外進出成功のポイントについて論じた本。

 この本の特徴は、なんといっても、良品計画大戸屋、セコム、公文教育研究会の4社の事例を、それぞれの企業の関係者に直接取材して行っている点である。海外進出にあたって、どういう苦労や失敗があったのか、軌道に乗った要因は何なのか、といったことが丁寧に取材されている。

 4つの例から浮かび上ってくるサービスの海外展開で重要になることも見えてくる。特に、そのサービスの特徴を形作っているコンセプトが現地の顧客に魅力のあるものとして受け入れられるかどうかということはもっとも大切な点である。良品計画の場合は「MUJI」、大戸屋の場合はセントラルキッチン方式ではなく日本料理を店舗で調理して出す、セコムの場合はファシリティ・アドバイザーではなくサービス・アドバイザー、公文教育研究会は「公文式」といったユニークさがある。

 ただし、各社とも一定の成功を収めるまでは苦労している。本書では、文化・事業・労働環境の違いといった3つの基盤の違いに特に注目している。たとえば、日本ではそれでいいかもしれないが自分たちの国ではダメだ、といったような主張はかならず出てくるようで、その会社の強みとなるコンセプトを現地従業員に浸透させることは各社とも苦労している。コンセプトを現地で粘り強く伝える伝道師の重要性についても協調されている。

 世界的に、モノ消費から、コト消費へのシフトが言われる中、少子高齢化と人口減少の続く日本国内での成長の限界を感じて海外に目を向ける企業はサービス業においても少なくない筈で、そのような企業にとっては4つの会社の苦労話を交えた事例は参考になると思う。また、コンセプトの浸透の重要性といった点についてはサービス業だけでなく、製造業の現地化においても重要だと思われる。

 

単行本、238ページ、東洋経済新報社、2017/9/8

 

サービスイノベーションの海外展開

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