密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

FinTechの衝撃

著:城田 真琴

 

 FinTechについて解説した本である。今や、FinTechの本はいくつも出版されているが、それらの紹介本に必ず登場する海外を中心としたユニークなサービス事例紹介については、件数はあまり多いとは言えないものの、その分ひとつひとつ丁寧に説明している傾向があるのが本書の特徴になっている。

 どういう新しいビジネスモデルが生まれているかだけならネットで検索すれば簡単に情報が見つかるし、先行して出版された本にもいくつも載っているので、少し突っ込んだ解説を心がけているように見える点は良いように思われる。図表も多く掲載されている。単に海外の資料をそのまま流用しているものも少なくないが、ひと手間かけて一覧にするなどして編集されているものも多くあり、この点もなかなか参考になる。

 ゴールドマンサックス、JPモルガンBBVAといった海外の金融機関がどのようにFinTechに対応しようとしているのかについても、多角的な視点から書かれている。また、終盤での日本と海外のマクロ的な違いについての解説も、常識的な内容ながら、一定の説得力がある。

 一方で、日本のFinTechの事情については、「その気になりさえすれば、情報入手はたやすいため」という理由で、それほど詳しく書かれているわけではない。Blockchainには1章を当てていて最低限の解説はあるが、Aiについてはロボアドバイザーなどがよく出てくるものの技術的なトレンドについてはまとめて解説されているところがない。法規制の問題についても、銀行法改正については繰り返し出てくるが、それ以外はあまり触れられていない。ただ、FinTechといってもその範囲は広く、一冊で全部を網羅するというわけにはなかなかいかないものである。

 FinTechは毎日新しい動きがあり、2018年に勧められるところは少ない。ただ。全体的には単なる事例紹介にとどまらない内容になっており、参考になるところはいくつかあった。

 

単行本、283ページ、東洋経済新報社、2016/8/26

 

目次

第1章 なぜ今、フィンテックなのか?
第2章 フィンテックサービスの実際
第3章 フィンテックの核心技術「ブロックチェーン
第4章 金融機関のフィンテック戦略
第5章 モジュール化する金融サービス
第6章 日本におけるフィンテックの方向性

 

FinTechの衝撃―金融機関は何をすべきか

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