密林の図書室

人生は短く、経験からのみ得られることは限られます。読書から多くのことを学び、アウトプット化も本との対話の一部として大切なものだと考えてきたので、このブログを立ち上げて日々読んできた本の備忘録として活用しています。

決済の黒船 Apple Pay

著:鈴木 淳也

 

 2016年10月にApple Payが日本に登場した。iPhoneユーザが多い日本の実態に合わせ、FeliCa方式をサポートして。かつて世界の電子マネーの最先端を走り「Bank3.0」などでも激賞されていたFeliCa方式がいつの間にかガラパゴスと揶揄されるようになっていた状況は、1日にして変わった。本書にもあるようにJR東日本Suica登録受付サーバが通常の100倍近いトラフックのためダウンしたくらいである。

 本書は、Apple Payとはどういう方式で、どのような特徴があるのか、どうしてこのように受け入れられるようになったのか、といったことを易しく解説している。トークナイゼーション、Touch ID、ホストカードエミュレーション(HCE)。高いセキュリティはクレジットカードの番号のスキミングや不正使用に悩むカード業界にとって悪くない話だ。決済手数料は取られるが、Appleがカード情報や購買履歴には一切関知しない方針を打ち出したこともイシュアの安心感を生んだ。そして、日本でのFeliCaサポート。

 Apple Payでは、カードを発行した国によって登録するセキュアエレメントを決定するロジックを組み込んでいるので、日本のイシュアが発行した国内カードはFeliCaが、海外で発行したカードはType A/Bが自動選択される。ただし、アプリ決済やブラウザ決済のようなオンライン取引では、国際ブランドの決済ネットワークを使うために、国内カードも海外発行カードと同じ仕組みになる。

 十分な内容ではないが、アメリカでApple Payが出る前のGoogle Walletの事実上の失敗や、各国の状況についても書かれている。2次元バーコード決済などについても少し書かれている。終盤では、著者の考える将来についても述べられている。

 わかりやすく書かれており、行間が広く、文字数が少なく、すぐ読み切れる。技術的に詳しいことを知りたい人向けの補足解説や、キャッシュレスのサービスを日常生活で利用したい人向けのガイドなどがあればなおよかった。

 

単行本、184ページ、日経BP社、2016/12/9

 

決済の黒船 Apple Pay (日経FinTech選書)

決済の黒船 Apple Pay (日経FinTech選書)