著:坂井 隆之、宮川 裕章、毎日新聞フィンテック取材班
「AI」という言葉が全面に出ているタイトルとなっていて、確かに技術要素としてはAIはあちこちに出てくるものの、より正確には、この本は「フィンテック」を扱ったものである。
J-Scoreのような個人情報をもとにした融資サービス。ロボアドバイザーによる資産運用。メガバンクの新型店舗。地銀の苦境と協調。RPAの導入。Amazonのようなプラットフォーマーが金融分野へ進出することへの警戒。
保険分野のフィンテックである「インシュアテック」。歩数など健康になる努力をすることで安くなる保険。
ビットコインをはじめとする仮想通貨の急騰と急落。コインチェック事件。ICOの問題。ブロックチェーンへの期待。
個人情報のスコアリング。中国とスウェーデンのキャッシュレス社会。MUFGマネー。共通QR構想。国家が発行するデジタル通貨。
フィンテックの影の部分についても一章を割いて説明してある。キャッシュレスになることでキャッシュの持っていた匿名性が失われる。Facebookで問題になったような個人情報が同意の元で勝手に利用されるリスク。データ漏洩のリスク。キャッシュレスで便利になったことと引き換えに、政府が個人情報を握れるようになった中国。ヨーロッパのGDPR。
それほど特別詳しい内容ではなく、一般向きである。既にこの分野に詳しい人には少し物足りないかもしれない。また、図表が一切無い。ただ、B2Cを中心に、昨今のフィンテックの事情がよくまとまっている。
新書、254ページ、文藝春秋、2018/11/20