著:大森 洋平
NHK職員向けの資料を基にしたオリジナル本。アイウエオ順に辞書形式になっていて多少単調ではあるが、「へえ~」の連続で、結構面白い。いくつか例を挙げる。
・「空気」「青年」「単純」「結局」「自覚」「時間」「象徴」「神経」「信仰」「迫力」「拍手」「責任」「動員」「反対」「絶対」「天下の台所」「不可能」はいずれも現代語なので、時代劇では使わない。
・「虹」は昔の日本では凶兆とされた。「勉強」は努力の意味だった。
・江戸時代に「鍋料理」はなかった。
・「遠島」は終身刑だった。「牢獄」はあくまで判決が出るまで収監する施設で、今でいう拘置所であり、刑務所ではない。
・「検閲」は軍人が民間に出す手紙に対して行われたのであって、通常、その逆はない。
・「地球球体説」と「地動説」は別物で、天動説のプトレマイオスも地球儀を作っていたし、織田信長も地球儀は持っていた。
・「まり」でドリブルするようになったのは木綿糸が普及した江戸時代からで、それまでは上方についた。
・「野菜」は享保以降の言葉。「白菜」は日清戦争以降、他。
「第一次世界大戦」という言い方は第一次世界大戦当時にはしない、というような、よく考えると当たり前すぎることも書いてあるが、実際に映画の字幕のセリフで「第一次世界大戦がはじまった」というのがあったりするらしい。
また、備前・備中・備後のような「前・中・後」は京都に近い方が前になるというようなことは、言われてみればそうだなと思った。帝国陸海軍での言い方の違いは、結構知らないことが多かった。雑学的にも、歴史の豆知識的にも読める。一見、とっつきにくい書きぶりの本だが、書かれている内容自体は面白いものが時々あった。
文庫、327ページ、文藝春秋、2013/12/4