著:國貞克則
財務3表一体理解法の姉妹編。財務3表一体理解法が理論編で、こちらが実践編という位置づけになる。
事業とは、資本を調達して資産を取得し、その資産を売上に変え、その売上から利益を得るプロセスになる。図示すると、以下の形である。よって、投資家からすれば、ROE(Return Of Equity)=当期純利益÷自己資本×100によって計算できるリターンの大きさが、ひとつの目安になる。
自己資本(資本金など)+他人資本(借入金など)→資産→売上→当期純利益
PLとBSによってザックリと大枠を把握し、気になるところから財務諸表の細かい数字に入っていくことで企業の経営状態や方針について理解することができる。それに加え、現金の出入りを示す収支計算書であるキャッシュフロー(CS)も重要で、「営業キャッシュフロー」「投資キャッシュフロー」「財務キャッシュフロー」の3つをつかむ。本書では、具体例として自動車メーカーをはじめとするいろいろな実際の企業の財務レポート(PL・BS・CS)を分析してみた解説が中心の本である。
「スバル」の好調さ、「アップル」がいかに儲かっているか、「帝国ホテル」と「パレスホテル」の経営方針の違い、ということを実際の財務諸表に基づいて説明してあり、興味深い。財務諸表だけではなかなか見抜くことはできないが、粉飾決算というのはどういうものかについても書かれてある。
財務諸表を作るのは高い知識がいるし、細かく読み取るのも易しくはないが、ざっくりと理解するだけならそれほど高度な知識がなくてもできるし、それだけで用が足りるケースも多い。本書は、そういった財務諸表の大枠から企業全体を読み取る力を身に着けるために有効である。
新書、264ページ、朝日新聞出版、2016/10/13